原発に代わる風力発電「ふくしま未来」 [原発]
水面から100メートルの風車
事業の概要は?
東日本大震災および原発事故の被害を受けた福島県の復興のため、政府主導で福島県沖合に世界初の浮体式洋上ウインドファーム(集合型風力発電所)を建設する実証研究です。わが国の自然環境条件に適合し、安全性、信頼性、経済性の高い浮体式洋上風力発電技術を確立し、さらに、福島県が風力発電関連産業の一大集積地となることを目指しています。
丸紅、東京大学など11の企業・大学からなるコンソーシアム(企業連合)が経済産業省から委託を受け、福島県ならびに周辺海域の漁業関係者と共に、事業を進めています。
大規模な発電設備
昨年11月に、福島県沖20キロの洋上で、出力2000キロワットの浮体式洋上風力発電設備「ふくしま未来」と変電施設を持つ浮体式洋上サブステーション「ふくしま絆」、66キロボルトの大容量海底送電ケーブルの設置工事が完了し、運転を開始しました。
「ふくしま未来」のブレード(羽根)は3枚で、長さ40メートル。風車の水面からの高さは100メートルを超えます。さらに本年度からは、7000キロワットの浮体式洋上風力発電施設(世界最大級)を2基導入する予定です。完成すれば、浮体式としては世界初の洋上ウインドファームとなります。
「ふくしま絆」には気象や波浪などの多角的な観測システムを導入しており、総合的な計測技術の確立を図ります。
洋上風力発電の特徴
陸上と比べ、より効率的な発電が可能となります。わが国での風力発電の設備利用率(理論上の最大発電量のうち、実際の発電量が占める割合)は、陸上では年平均で約20%ですが、洋上は35%程度となります。これは、陸上の適地には山が多く、風向きが乱れることが多いのに対し、洋上では風向きが安定し、風量も多いためです。
浮体式の利点は?
これまでの主流は、海底に基礎を築いて設備を固定する着床式でした。遠浅の海域が多いヨーロッパで導入が進んでいます。水深が深くなるにつれて工事が困難になり、水深50メートル前後が限界とされています。わが国では適した海域が少なく、導入は一部の港湾部などに限られます。
その点、浮体式は、風車を海に浮かべるため、水深による制約を受けません。大型船のように、海底にアンカー(錨)を打ち込み、係留索で固定します。実際、福島沖で設置した海域は、水深約120メートルです。
設置可能な海域が広がる
わが国の領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせると447万平方キロと、世界で6番目の広さです。また、環境省の調査によると、わが国における洋上風力の導入可能量は約15億7000万キロワットに上り、全国10電力会社の総電力設備容量2億657万キロワット(2010年度)と比べると、7倍を超える量です。その潜在的な可能性の高さが分かるでしょう。
漁業や安全性に配慮
環境への配慮
風車が居住地のそばにある場合は、低周波音による住民への健康被害の問題が挙げられますが、沖に20キロも離れた福島では、問題ないと認識しています。そのうえで、周辺の海鳥や漁業生物などへの影響調査も行っています。
また、漁業への弊害が出ないよう、漁業関係者と連携を密にしています。例えば、送電ケーブルは、底引き網漁に影響を及ぼさないよう、特殊な工法で海底の砂の1メートル下に埋設しました。
さらに、50年に1度の強風を想定し、浮体を海底に固定する6本のアンカーは、500トンの力で引っ張り、海底に食い込ませました。係留索とアンカーを合わせると1800トンの重さになります。実証研究事業の終了後には撤去も可能です。
先進技術の結晶
本年度に設置予定の7000キロワットの風車は、風車の回転を油圧ポンプに伝える新方式です。従来は、いくつもかみ合った歯車のうち、一つが壊れただけでも、大型重機を使って分解修理するしかありませんでした。油圧式は、一部が故障しても運用が可能で、メンテナンスも容易になります。
風力関連の産業が集まると、福島はどう変わる
福島県は2040年までに、県内で使われるエネルギー量の100%を、再生可能エネルギーでまかなうことを目標に掲げています。
これに向けて風力産業が集まることで、雇用は着実に増えます。一般に、1000キロワットの風車を生産すると15人の雇用が生まれるといわれています。洋上風力の場合は、海上での工事などもあり、22人に増えます。
風車の耐用年数は20年といわれるため、将来的にみても、一定の需要が継続して見込めます。もともと福島には自動車などの機械産業が多く、発展の素地もあります。今後も、洋上風力の導入促進を通し、復興の加速に貢献しています。
事業の概要は?
東日本大震災および原発事故の被害を受けた福島県の復興のため、政府主導で福島県沖合に世界初の浮体式洋上ウインドファーム(集合型風力発電所)を建設する実証研究です。わが国の自然環境条件に適合し、安全性、信頼性、経済性の高い浮体式洋上風力発電技術を確立し、さらに、福島県が風力発電関連産業の一大集積地となることを目指しています。
丸紅、東京大学など11の企業・大学からなるコンソーシアム(企業連合)が経済産業省から委託を受け、福島県ならびに周辺海域の漁業関係者と共に、事業を進めています。
大規模な発電設備
昨年11月に、福島県沖20キロの洋上で、出力2000キロワットの浮体式洋上風力発電設備「ふくしま未来」と変電施設を持つ浮体式洋上サブステーション「ふくしま絆」、66キロボルトの大容量海底送電ケーブルの設置工事が完了し、運転を開始しました。
「ふくしま未来」のブレード(羽根)は3枚で、長さ40メートル。風車の水面からの高さは100メートルを超えます。さらに本年度からは、7000キロワットの浮体式洋上風力発電施設(世界最大級)を2基導入する予定です。完成すれば、浮体式としては世界初の洋上ウインドファームとなります。
「ふくしま絆」には気象や波浪などの多角的な観測システムを導入しており、総合的な計測技術の確立を図ります。
圧倒的な導入可能量
洋上風力発電の特徴
陸上と比べ、より効率的な発電が可能となります。わが国での風力発電の設備利用率(理論上の最大発電量のうち、実際の発電量が占める割合)は、陸上では年平均で約20%ですが、洋上は35%程度となります。これは、陸上の適地には山が多く、風向きが乱れることが多いのに対し、洋上では風向きが安定し、風量も多いためです。
浮体式の利点は?
これまでの主流は、海底に基礎を築いて設備を固定する着床式でした。遠浅の海域が多いヨーロッパで導入が進んでいます。水深が深くなるにつれて工事が困難になり、水深50メートル前後が限界とされています。わが国では適した海域が少なく、導入は一部の港湾部などに限られます。
その点、浮体式は、風車を海に浮かべるため、水深による制約を受けません。大型船のように、海底にアンカー(錨)を打ち込み、係留索で固定します。実際、福島沖で設置した海域は、水深約120メートルです。
設置可能な海域が広がる
わが国の領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせると447万平方キロと、世界で6番目の広さです。また、環境省の調査によると、わが国における洋上風力の導入可能量は約15億7000万キロワットに上り、全国10電力会社の総電力設備容量2億657万キロワット(2010年度)と比べると、7倍を超える量です。その潜在的な可能性の高さが分かるでしょう。
漁業や安全性に配慮
環境への配慮
風車が居住地のそばにある場合は、低周波音による住民への健康被害の問題が挙げられますが、沖に20キロも離れた福島では、問題ないと認識しています。そのうえで、周辺の海鳥や漁業生物などへの影響調査も行っています。
また、漁業への弊害が出ないよう、漁業関係者と連携を密にしています。例えば、送電ケーブルは、底引き網漁に影響を及ぼさないよう、特殊な工法で海底の砂の1メートル下に埋設しました。
さらに、50年に1度の強風を想定し、浮体を海底に固定する6本のアンカーは、500トンの力で引っ張り、海底に食い込ませました。係留索とアンカーを合わせると1800トンの重さになります。実証研究事業の終了後には撤去も可能です。
先進技術の結晶
本年度に設置予定の7000キロワットの風車は、風車の回転を油圧ポンプに伝える新方式です。従来は、いくつもかみ合った歯車のうち、一つが壊れただけでも、大型重機を使って分解修理するしかありませんでした。油圧式は、一部が故障しても運用が可能で、メンテナンスも容易になります。
風力関連の産業が集まると、福島はどう変わる
福島県は2040年までに、県内で使われるエネルギー量の100%を、再生可能エネルギーでまかなうことを目標に掲げています。
これに向けて風力産業が集まることで、雇用は着実に増えます。一般に、1000キロワットの風車を生産すると15人の雇用が生まれるといわれています。洋上風力の場合は、海上での工事などもあり、22人に増えます。
風車の耐用年数は20年といわれるため、将来的にみても、一定の需要が継続して見込めます。もともと福島には自動車などの機械産業が多く、発展の素地もあります。今後も、洋上風力の導入促進を通し、復興の加速に貢献しています。
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