SSブログ

アイソン彗星がやってくる [天体ショー]

11月中旬から夜明け前の東の空に 天体写真家 藤井旭
2_7.jpg彗星の動き 彗星は太陽に近づくほど、蒸発が激しくなり、大きく明るく、尾も長くなります。また太陽から吹き付ける太陽風などによって、尾はいつも太陽と反対方向に伸びることになります。

 「今年最高の天体ショー」と期待を集めている、アイソン彗星が間もなくやってきます。天体写真家で、『星と暮らす。』『宇宙のしくみ 星空が語る』などの著書があり、星空の世界の分かりやすい解説で定評のある藤井旭さんに、アイソン彗星の特徴や観測のポイントとともに、彗星という天体の不思議について、つづってもらいました。

人類との一期一会

 どこからともなく現れ、長い尾を引いて夜空を横切り、そして、どこへともなく去っていく彗星は、“星空の旅人”に例えられる天体です。

 1年間に発見される彗星の数は、250個近くにもなります。そのほとんどは肉眼では見えない、かすかなものばかりですが、10年か20年に1個ぐらいの割合で、肉眼で見えるものが現れてくれます。

 そんな“大物彗星”の一つで、昨年9月に発見されたアイソン(ISON)彗星が、11月中旬から12月中旬に掛け、夜明け前の東の空に現れるというので、大きな話題になっています。

 アイソンという名前は、彗星を発見した人の名前ではなく、新彗星の発見に活躍しているプロジェクトのチーム名です。天文学的には「C/2012 S1」とされる新彗星なのです。

 彗星といわれて、誰もがまず思い浮かべるのは、あの有名なハレー彗星の名前でしょう。有史以来、およそ76年ごとに現れ、人々を驚かせ続けている大彗星ですが、ある一定の間隔をおいて現れるところから、ハレー彗星のような彗星は「周期彗星」と呼ばれています。その一方で、アイソン彗星は、今回初めて太陽に接近し、遠ざかった後は二度と戻ってこない彗星だと明らかになっています。まさに今回の登場が、人類との一期一会となるわけです。

太陽系史の生き証人
1_17.jpg有名なハレー彗星。次回は、2061年の夏に現れます

 では、アイソン彗星のような新彗星は、一体どこからやってくるのでしょうか。それは、太陽系の最果てともいえる外縁部に、「オールトの雲」と呼ばれる彗星の巣があって、太陽系全体をふんわり球状に取り囲むように彗星の卵たちが、それこそ無数に浮かんでいると考えられています。

 その彗星の巣から、何らかのきっかけで太陽に向かうはるかな旅路をたどるようになったのが、アイソン彗星のような“新人彗星”で、地球のあたりまでやってくるのに数百万年はかかると見られています。

 ハレー彗星のような周期彗星は、旅の途中で木星のような大惑星の強力な引力で軌道をねじ曲げられてしまったもので、かつては太陽系外縁部にある彗星の巣の出身者だったに違いありません。

 では、どうして太陽系の最果てともいえるオールトの雲のあたりに、無数の彗星の卵たちが球状に浮かび漂っているのでしょうか。

 今からざっと46億年もの昔、原始太陽系星雲の中で太陽系が誕生するとき、数キロメートル大の、おびただしい数の小さな微惑星たちができ、それらがおにぎりのように寄り集まり、固まって地球のような惑星に成長したとされます。そして、その際に惑星になれず、取り残された微惑星たちが、はるか太陽系の外縁部まではじき飛ばされ、「オールトの雲」が作られたのだと考えられています。

 つまり、彗星は太陽系誕生時の秘密を知る生き証人、太陽系の化石天体ともいえる存在なのです。さらに最近では、無数の彗星たちが原始地球に衝突して海を作り、生命の誕生につながる有機物を運び込んだ張本人だったかもしれないなどとさえ、取り沙汰されるようにもなっています。

三日月並みの明るさに
4-1.jpg東京での日の出45分前の様子ですが、全国ほぼ同じような見え方となります

 そんな彗星たちの実態は、天体とは名ばかりの「汚れた雪玉」に例えられるような、頼りないものですが、それが太陽に近づくと強烈な熱であぶられて少しずつ蒸発し、噴き出したガスやチリが太陽風や太陽の光圧に押され、吹き流しのように長い尾をたなびかせ、「ほうき星」などと呼ばれる姿となって、夜空に掛かるのです。

 大昔の人々にとって、彗星が現れるのは、戦争などの凶兆とされてきました。しかし、彗星に言わせれば、「いつ戻ってきても、人間どもは争い事ばかりしている……」とぼやき、つぶやいているというのが本当のところではないでしょうか。

 それはさておき、アイソン彗星が肉眼で見えるようになるのは11月中旬ごろからで、夜明け前の東の空で少しずつ明るさを増し、長い尾を引くように見え始めます。そして、11月29日に太陽に最も近づき、その後は再び太陽から離れていき、12月中旬ごろまで肉眼で夜明け前の東の空に見ることができます。

 太陽に大接近するころの明るさは、なんとマイナス7等星くらい、つまり宵の明星の金星よりずっと明るい、三日月並みになるというのですから驚きですが、少し心配な点がないわけでもありません。

 大きさが5キロメートル大の汚れた雪玉のようなアイソン彗星が太陽に近づきすぎるため、蒸発して消えてしまわないかということです。なんとか生き残って、再び12月初旬の夜明け前の東の空に、長い尾を引いた雄姿を見せてくれることを願い、見守ることにしましょう。

アイソン彗星の見え方(予想図)

 肉眼でもよく見えるのは11月下旬から12月上旬のころ。夜明け前の東の空で、ごく低いところに見えます。11月29日は、太陽に近すぎて彗星はまだ、地平線の下にあります。

 図に示してあるゲンコツのスケールは、自分の目の前に腕をいっぱいに伸ばしたときのもので、星空のおよその角度を知るのに便利です。これによって尾の長さがどれくらいに見えるのか、見当が付けられます。

 図のアイソン彗星は3日ごとの位置で示してありますが、双眼鏡を使うと肉眼より、さらにはっきり見えますので、11月初旬ごろから12月下旬ごろまでの長期間にわたってその姿を見ることができます。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。