女優 土屋太鳳さん [10代女優]
「いろんな自分」を見つけていきたい!
今回の『10代の「○○」。』は、若手実力派女優として注目を集めている、土屋太鳳さんの登場です。現在公開中の映画「人狼ゲーム ビーストサイド」(AMGエンタテインメント)では、究極の心理ゲームを繰り広げる女子高生役を熱演。19歳の土屋さんは、どのように今作と向き合い、役者として、どんな10代の人生を歩もうとしているのでしょうか――。
今作は、土屋さん演じる樺山由佳ら10人の高校生が目を覚ます場面から始まる。彼女たちは拉致され、見知らぬ施設に閉じ込められていた。姿を見せない犯人の指示通りに生活するしかなく、次第に理性を失い、互いに疑心暗鬼を生じていく。
登場人物には、“超不良”といった極端な役柄は出てきません。“普通の子”が極限状態に置かれて、人を疑い騙すようになる様が描かれています。
一見、非日常の特別な状況を演じているようで、意外と、普段感じる心理に近いかも、と思いました。学校という閉鎖的な空間の中で、ちょっとしたすれ違いや疑いなどから、気付いたら誰かをいじめているなど、相手を深く傷つけてしまうことがあります。そういう状況を何とかしたいとの思いもあって、懸命に演じました。
近年、10代を取り巻く環境は変化し、新たな問題が起きている。学校の教室では、各人が人気順にグループ分けされる「スクールカースト」が存在する。皆がしがらみの中で仲間外れにおびえ、自分の“キャラ”をはみ出さないよう、空気を読みながら生活している。
若い子の悩みの根源は、周囲の顔色をうかがいながら生活しなきゃいけないという、生きづらさにあると思います。
自分がどう見られているかが気になり、自分の表情や声のトーンといった些細なことを意識しがち。演技中、そんな繊細な部分を表現したい、と努力しました。
映画の主人公・樺山は野性的でパワフルな女子高生。今までにない、土屋さんの役柄に、演技の幅の広がりと“女優根性”を見た。
これまで演じたどの役柄とも違い、役作りの経験や心の物差しを取り除かないと役に近づくことができず、すごく苦しみました。
ですが、「いろんな経験を通し、『いろんな自分』を見つけていきたい!」と、年頭に決めたことを思い出したんです。
“今、逃げたら女優としての未来はない”と思えて、その強い気持ちが役と重なり、何とか演じ切れました。
誰だって未踏の分野に不安や苦労はつきもの。けれど、成長の鍵はそこにあります。私も、自身の思いがけない一面を見つけることができたように思います。
「どうか、私を映画の世界に入れてください!」と訴え、10歳で女優の道へ。そんな強気な土屋さんだが、かつて挫折を経験し、女優を辞めようと思ったこともあった。
昔から声の質と滑舌にコンプレックスを抱いていました。中学3年の時、さまざまなオーディションに落ち続けたことも重なり、「仕事を辞める」と言って、家族と大げんかになったんです。
そんな時、NHK大河ドラマ「龍馬伝」のオーディションを受けました。周囲は有名な子役たちばかりで、ある俳優の先輩に言われた、「不利だと思ったら、元気良く挨拶を」という言葉がよみがえりました。大きな声で思いを伝えた結果、合格することができたんです。
他の先輩からも、「滑舌も大事だけど、これを伝えたいって感情がどれだけ入っているかにかかっているんだ」とアドバイスされました。以来、思い切って演技できるようになり、それが私の持ち味となりました。
落ち着いたイメージが強い土屋さんだが、実は運動神経抜群のスポーツ女子。3歳でクラシックバレエと日本舞踊を始め、陸上競技やバスケットボールも経験。高校で名門の創作ダンス部に入り、在籍時に、同部は全国大会で入賞を果たす。聞けば、その陰には、恩師の支えがあったという。
仕事が多忙になるにつれ、ダンス部に顔を出せなくなり、“ここに私の居場所はないのでは”と悩みました。
そんな時、顧問の先生が、私を特別扱いせず、“みんなも頑張っているの。中途半端ではいけない!”と叱ってくれたんです。一生徒として見てくれたことがうれしかった。
厳しい半面、「土屋が出るらしいぞ」と出演作品の宣伝もしてくれるなど、女優業での活躍も見守ってくれました。先生がいなかったら、高校を辞めていたかもしれません。
部活から逃げなかったことが人間的な成長につながり、芝居にも生かされています。
来春から始まるNHKの連続テレビ小説「まれ」のヒロインにも選ばれた土屋さん。最後に、10代の読者と共有したい思いを尋ねてみた。
小さいことの積み重ねが、後々、生きてきます。例えば、規則正しい生活、ご飯をよくかむ、時間を守る。また、“時間を味方に付ける”ことも大切!
すぐに結果が得られなくても、努力の蓄積が成功につながっていくと信じています。私も、まだまだこれから。共にあがき、共に歩んでいきましょう。
「人狼ゲーム」とは命懸けの頭脳ゲーム。プレーヤーは「人狼」「村人」の2役に分かれる。村人の目的は、少人数の人狼を見つけ出して退治すること。その一方、人狼は多数の村人を欺きながら倒さなければならない。
映画「人狼ゲーム ビーストサイド」(R15指定)では、お互いの正体を探り合う、究極の心理戦が描かれている。新宿武蔵野館ほかで全国公開中。
■プロフィル つちや・たお 1995年、東京都生まれ。2005年のオーディションを機に芸能界入り。08年、映画「トウキョウソナタ」で女優デビュー。ドラマ「鈴木先生」で注目を集め、これまでNHKの連続テレビ小説「花子とアン」、映画「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」などに出演。女優業のかたわら、日本女子体育大学の舞踊学専攻に通う。
今回の『10代の「○○」。』は、若手実力派女優として注目を集めている、土屋太鳳さんの登場です。現在公開中の映画「人狼ゲーム ビーストサイド」(AMGエンタテインメント)では、究極の心理ゲームを繰り広げる女子高生役を熱演。19歳の土屋さんは、どのように今作と向き合い、役者として、どんな10代の人生を歩もうとしているのでしょうか――。
今作は、土屋さん演じる樺山由佳ら10人の高校生が目を覚ます場面から始まる。彼女たちは拉致され、見知らぬ施設に閉じ込められていた。姿を見せない犯人の指示通りに生活するしかなく、次第に理性を失い、互いに疑心暗鬼を生じていく。
登場人物には、“超不良”といった極端な役柄は出てきません。“普通の子”が極限状態に置かれて、人を疑い騙すようになる様が描かれています。
一見、非日常の特別な状況を演じているようで、意外と、普段感じる心理に近いかも、と思いました。学校という閉鎖的な空間の中で、ちょっとしたすれ違いや疑いなどから、気付いたら誰かをいじめているなど、相手を深く傷つけてしまうことがあります。そういう状況を何とかしたいとの思いもあって、懸命に演じました。
近年、10代を取り巻く環境は変化し、新たな問題が起きている。学校の教室では、各人が人気順にグループ分けされる「スクールカースト」が存在する。皆がしがらみの中で仲間外れにおびえ、自分の“キャラ”をはみ出さないよう、空気を読みながら生活している。
若い子の悩みの根源は、周囲の顔色をうかがいながら生活しなきゃいけないという、生きづらさにあると思います。
自分がどう見られているかが気になり、自分の表情や声のトーンといった些細なことを意識しがち。演技中、そんな繊細な部分を表現したい、と努力しました。
映画の主人公・樺山は野性的でパワフルな女子高生。今までにない、土屋さんの役柄に、演技の幅の広がりと“女優根性”を見た。
これまで演じたどの役柄とも違い、役作りの経験や心の物差しを取り除かないと役に近づくことができず、すごく苦しみました。
ですが、「いろんな経験を通し、『いろんな自分』を見つけていきたい!」と、年頭に決めたことを思い出したんです。
“今、逃げたら女優としての未来はない”と思えて、その強い気持ちが役と重なり、何とか演じ切れました。
誰だって未踏の分野に不安や苦労はつきもの。けれど、成長の鍵はそこにあります。私も、自身の思いがけない一面を見つけることができたように思います。
「どうか、私を映画の世界に入れてください!」と訴え、10歳で女優の道へ。そんな強気な土屋さんだが、かつて挫折を経験し、女優を辞めようと思ったこともあった。
昔から声の質と滑舌にコンプレックスを抱いていました。中学3年の時、さまざまなオーディションに落ち続けたことも重なり、「仕事を辞める」と言って、家族と大げんかになったんです。
そんな時、NHK大河ドラマ「龍馬伝」のオーディションを受けました。周囲は有名な子役たちばかりで、ある俳優の先輩に言われた、「不利だと思ったら、元気良く挨拶を」という言葉がよみがえりました。大きな声で思いを伝えた結果、合格することができたんです。
他の先輩からも、「滑舌も大事だけど、これを伝えたいって感情がどれだけ入っているかにかかっているんだ」とアドバイスされました。以来、思い切って演技できるようになり、それが私の持ち味となりました。
落ち着いたイメージが強い土屋さんだが、実は運動神経抜群のスポーツ女子。3歳でクラシックバレエと日本舞踊を始め、陸上競技やバスケットボールも経験。高校で名門の創作ダンス部に入り、在籍時に、同部は全国大会で入賞を果たす。聞けば、その陰には、恩師の支えがあったという。
仕事が多忙になるにつれ、ダンス部に顔を出せなくなり、“ここに私の居場所はないのでは”と悩みました。
そんな時、顧問の先生が、私を特別扱いせず、“みんなも頑張っているの。中途半端ではいけない!”と叱ってくれたんです。一生徒として見てくれたことがうれしかった。
厳しい半面、「土屋が出るらしいぞ」と出演作品の宣伝もしてくれるなど、女優業での活躍も見守ってくれました。先生がいなかったら、高校を辞めていたかもしれません。
部活から逃げなかったことが人間的な成長につながり、芝居にも生かされています。
来春から始まるNHKの連続テレビ小説「まれ」のヒロインにも選ばれた土屋さん。最後に、10代の読者と共有したい思いを尋ねてみた。
小さいことの積み重ねが、後々、生きてきます。例えば、規則正しい生活、ご飯をよくかむ、時間を守る。また、“時間を味方に付ける”ことも大切!
すぐに結果が得られなくても、努力の蓄積が成功につながっていくと信じています。私も、まだまだこれから。共にあがき、共に歩んでいきましょう。
「人狼ゲーム」とは命懸けの頭脳ゲーム。プレーヤーは「人狼」「村人」の2役に分かれる。村人の目的は、少人数の人狼を見つけ出して退治すること。その一方、人狼は多数の村人を欺きながら倒さなければならない。
映画「人狼ゲーム ビーストサイド」(R15指定)では、お互いの正体を探り合う、究極の心理戦が描かれている。新宿武蔵野館ほかで全国公開中。
■プロフィル つちや・たお 1995年、東京都生まれ。2005年のオーディションを機に芸能界入り。08年、映画「トウキョウソナタ」で女優デビュー。ドラマ「鈴木先生」で注目を集め、これまでNHKの連続テレビ小説「花子とアン」、映画「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」などに出演。女優業のかたわら、日本女子体育大学の舞踊学専攻に通う。