無業社会と向き合う ~今できること・目指すところ~ [就職・働く]
若年無業者の増加は顕著で、今や、若者たちの16人に1人が無業状態にあるといわれています。
自立支援を受けた当事者と、そのご家族に対して調査を行ってきました。それによれば、彼らの多くは決して怠けているわけではなく、ほとんどが働くことへの意欲を持ち、実際に7割以上は過去に何らかの就労経験があるのです。
職場での人間関係の悩み、就職活動での挫折――無業に陥るきっかけはさまざまです。殊に近年は、本人にとって不可避な理由から無業となるケースが増えています。
高学歴であっても、企業倒産やリストラに直面して無業となった人や、激烈な労働環境が原因で病気やけがを患い、働けなくなってしまったという人も少なくありません。
ともかく、「若者の誰もが無業に陥る可能性があり、そこから脱出することは難しい」という現状を、多くの人に知ってほしいと思います。
無業状態に悩むご本人、またお子さんを持つご家族に伝えたいのは、「無業状態自体を恥ずかしがる必要はない」ということです。
本人や家族が無業を「恥」と感じてしまうと、その苦境について、誰かに相談することは難しくなります。結果、行政やNPOによる支援が遅れ、問題が長期化する要因にもなりかねません。
大切なのは、現状を認識して今後の進むべき道筋を考えること。その上で、本人の不安の源を突き止めて解決する。インターンシップやジョブトレーニングを通して、仕事への意欲や自信を呼び覚ます――このような段階的な支援の枠組みが必要になります。
また、「第三者の助けの手を借りる」ことをためらわないでほしい。これまでの経験、そして調査研究の結果から考えても、若者本人の努力や家族の助けだけでは、無業状態から脱け出すのは困難だからです。
どのような支援にせよ、まずは、苦しんでいる若者がどこにいるのか「発見」することから始まります。もし身の回りに無業で悩む若者がいるなら、躊躇せずに誰かが代わりになって「ここに苦しんでいる人がいる」と伝えてください。
本人が難しいのならば家族が、家族でも難しいなら、地域や何らかの関わりを持つ周囲の誰かが代わりに声を上げてほしい。本人のもとに、行政や支援団体がたどり着くだけでも、問題解決の可能性は確実に広がります。
自立に向けた支援のプロセス
無業状態にある若者の自立を支援するためには「①発見→②誘導→③支援→④出口→⑤定着」という過程を踏みます。支援組織にもそれぞれ得意分野があるので、状況に応じて、複数の窓口に当たることを心掛けましょう。
① 発見
「発見」は、まさに支援組織が苦しんでいる若者を見つける最初の段階。無業状態のお子さんを抱える親御さんが、行政の窓口や自立支援組織に相談を持ちかけ、時機を見て本人を連れてくる場合が多いようです。
無業の本人は苦しんでいるからこそ、自ら行動を起こしづらい状況にあります。親や家族、友人らの助けが重要です。
② 誘導
無業の若者とコンタクトした後に「誘導」が始まります。本人が目標に向けて、一歩前へ踏み出せるように決心を促す段階です。
何をすればいいのかも分からず、駆け込み的に支援組織を頼る無業の若者には、自立のために何から始めればいいのかについて、支援スタッフとの相談を重ねながら探っていきます。
③ 支援
目標が決まれば、就労へ向けての「支援」が始まります。育て上げネットが実施している“ジョブトレ(就労までの基礎訓練プログラム)”では、まず週5日以上働ける体力を付けるために、体を動かす作業を伴う労働体験や、ITなどのスキル形成からスタートします。
その後、インターンシップなどを通じ、実際の職場の人間関係に慣れてもらう、というように支援を進めていきます。
④ 出口
「出口」は、就職を具体的に後押しする段階です。
彼らはすでに、週5日以上働くことができる体力も付き、また人間関係のある職場がどういうものかを理解しています。
残る問題は、条件に合った労働環境や雇用形態の仕事に巡りあえるか、そして本人が勇気を出して社会への一歩を踏み出せるかどうかだけです。
⑤ 定着
最後は「定着」。就職後の苦労を乗り越えていく段階です。
働き始めた若者たちから寄せられる相談に応じる一方、「就職先でできた後輩の面倒をみるようになったことで、仕事への新たな意欲が生まれ、苦労を乗り越える力になった」という報告をよく聞きます。
そんな小さなきっかけも、根気強く働き続けるためのエネルギーになるようです。
無業の若者に接する際のポイント 「本人は動けない」を前提に
無業であることの不安や恥ずかしさは、本人にとっては切実な問題です。まず、「無業の若者本人が主体的に行動することは難しい」という前提に立ちましょう。そうすれば、「いつかは動き出すだろう」との安易さによって、問題が長期化する事態を防ぐこともできます。
ゴールは「働き続ける」こと
職に就く以上に大切なのは、本人が働き続けられるようになることです。職業体験プログラムの目的は、本人に合う職種を見つけてもらうことです。裏を返せば「今の自分にはできそうにないこと」を理解して、「今できること」にエネルギーを集中してもらう狙いもあります。
複数の窓口に支援の相談を
複数の支援窓口に相談するようにしましょう。そうすることで、より客観的に問題解決への道筋を考えられるからです。また支援団体を選ぶ際、居住地域からの距離に幅を持たせるのも一つの手。近くにある支援先だと周囲の目が気になり、支援を受けなくなる場合があるからです。
若年無業者の相談窓口 認定NPO法人 育て上げネット
工藤さんが理事長を務め、東京・立川市で若者自立支援を行っている認定NPO法人。問い合わせ先は、育て上げネット042(527)6051まで。日曜・祝日を除く午前9時~午後6時まで受け付けている。http://www.sodateage.net/
地域若者サポート ステーション
地域若者サポートステーション(サポステ)は、厚生労働省が認定した全国のNPO法人や株式会社などが実施しており、平成26年度は全国160カ所に設置されています。一覧は、若者自立支援中央センターが運営する「ニートサポートネット」で紹介されています。http://www.neet-support.net/
用語解説
注1【アウトリーチ】医療・福祉等の分野で、ケアが必要であるにもかかわらず、施設に通うことができない人々に、専門家が自分から出向いて支援する取り組みを指す。引きこもっている無業者の所へ支援者が訪問し、本人や家族に働きかけることなども、重要なアウトリーチと考えられる。 注2【ソーシャル・キャピタル】社会や地域での信頼関係や結びつきを表す概念で「社会関係資本」と訳される。ソーシャル・キャピタルが蓄積された社会では、相互の信頼や協力が得られやすいため、経済や教育、健康や幸福感の面でも良い影響がみられることについて、政治学者のロバート・パットナムによる実証研究など、さまざまな研究が進められてきた。 注3【ウイーク・タイズ】アメリカの社会学者・グラノヴェターが提唱した概念で、“ゆるやかな結びつき”を意味する。頻繁に接する会社や家族などとの強い結びつき(ストロング・タイズ)よりも、頻繁に会わなくても、信頼を維持しつつ付き合っている友人、知人とのゆるやかな結びつきの方が、自分が気づかない長所や思いがけない可能性を発見することに役立つという考え方で用いられることが多い。
自立支援を受けた当事者と、そのご家族に対して調査を行ってきました。それによれば、彼らの多くは決して怠けているわけではなく、ほとんどが働くことへの意欲を持ち、実際に7割以上は過去に何らかの就労経験があるのです。
職場での人間関係の悩み、就職活動での挫折――無業に陥るきっかけはさまざまです。殊に近年は、本人にとって不可避な理由から無業となるケースが増えています。
高学歴であっても、企業倒産やリストラに直面して無業となった人や、激烈な労働環境が原因で病気やけがを患い、働けなくなってしまったという人も少なくありません。
ともかく、「若者の誰もが無業に陥る可能性があり、そこから脱出することは難しい」という現状を、多くの人に知ってほしいと思います。
無業状態に悩むご本人、またお子さんを持つご家族に伝えたいのは、「無業状態自体を恥ずかしがる必要はない」ということです。
本人や家族が無業を「恥」と感じてしまうと、その苦境について、誰かに相談することは難しくなります。結果、行政やNPOによる支援が遅れ、問題が長期化する要因にもなりかねません。
大切なのは、現状を認識して今後の進むべき道筋を考えること。その上で、本人の不安の源を突き止めて解決する。インターンシップやジョブトレーニングを通して、仕事への意欲や自信を呼び覚ます――このような段階的な支援の枠組みが必要になります。
また、「第三者の助けの手を借りる」ことをためらわないでほしい。これまでの経験、そして調査研究の結果から考えても、若者本人の努力や家族の助けだけでは、無業状態から脱け出すのは困難だからです。
どのような支援にせよ、まずは、苦しんでいる若者がどこにいるのか「発見」することから始まります。もし身の回りに無業で悩む若者がいるなら、躊躇せずに誰かが代わりになって「ここに苦しんでいる人がいる」と伝えてください。
本人が難しいのならば家族が、家族でも難しいなら、地域や何らかの関わりを持つ周囲の誰かが代わりに声を上げてほしい。本人のもとに、行政や支援団体がたどり着くだけでも、問題解決の可能性は確実に広がります。
自立に向けた支援のプロセス
無業状態にある若者の自立を支援するためには「①発見→②誘導→③支援→④出口→⑤定着」という過程を踏みます。支援組織にもそれぞれ得意分野があるので、状況に応じて、複数の窓口に当たることを心掛けましょう。
① 発見
「発見」は、まさに支援組織が苦しんでいる若者を見つける最初の段階。無業状態のお子さんを抱える親御さんが、行政の窓口や自立支援組織に相談を持ちかけ、時機を見て本人を連れてくる場合が多いようです。
無業の本人は苦しんでいるからこそ、自ら行動を起こしづらい状況にあります。親や家族、友人らの助けが重要です。
② 誘導
無業の若者とコンタクトした後に「誘導」が始まります。本人が目標に向けて、一歩前へ踏み出せるように決心を促す段階です。
何をすればいいのかも分からず、駆け込み的に支援組織を頼る無業の若者には、自立のために何から始めればいいのかについて、支援スタッフとの相談を重ねながら探っていきます。
③ 支援
目標が決まれば、就労へ向けての「支援」が始まります。育て上げネットが実施している“ジョブトレ(就労までの基礎訓練プログラム)”では、まず週5日以上働ける体力を付けるために、体を動かす作業を伴う労働体験や、ITなどのスキル形成からスタートします。
その後、インターンシップなどを通じ、実際の職場の人間関係に慣れてもらう、というように支援を進めていきます。
④ 出口
「出口」は、就職を具体的に後押しする段階です。
彼らはすでに、週5日以上働くことができる体力も付き、また人間関係のある職場がどういうものかを理解しています。
残る問題は、条件に合った労働環境や雇用形態の仕事に巡りあえるか、そして本人が勇気を出して社会への一歩を踏み出せるかどうかだけです。
⑤ 定着
最後は「定着」。就職後の苦労を乗り越えていく段階です。
働き始めた若者たちから寄せられる相談に応じる一方、「就職先でできた後輩の面倒をみるようになったことで、仕事への新たな意欲が生まれ、苦労を乗り越える力になった」という報告をよく聞きます。
そんな小さなきっかけも、根気強く働き続けるためのエネルギーになるようです。
無業の若者に接する際のポイント 「本人は動けない」を前提に
無業であることの不安や恥ずかしさは、本人にとっては切実な問題です。まず、「無業の若者本人が主体的に行動することは難しい」という前提に立ちましょう。そうすれば、「いつかは動き出すだろう」との安易さによって、問題が長期化する事態を防ぐこともできます。
ゴールは「働き続ける」こと
職に就く以上に大切なのは、本人が働き続けられるようになることです。職業体験プログラムの目的は、本人に合う職種を見つけてもらうことです。裏を返せば「今の自分にはできそうにないこと」を理解して、「今できること」にエネルギーを集中してもらう狙いもあります。
複数の窓口に支援の相談を
複数の支援窓口に相談するようにしましょう。そうすることで、より客観的に問題解決への道筋を考えられるからです。また支援団体を選ぶ際、居住地域からの距離に幅を持たせるのも一つの手。近くにある支援先だと周囲の目が気になり、支援を受けなくなる場合があるからです。
若年無業者の相談窓口 認定NPO法人 育て上げネット
工藤さんが理事長を務め、東京・立川市で若者自立支援を行っている認定NPO法人。問い合わせ先は、育て上げネット042(527)6051まで。日曜・祝日を除く午前9時~午後6時まで受け付けている。http://www.sodateage.net/
地域若者サポート ステーション
地域若者サポートステーション(サポステ)は、厚生労働省が認定した全国のNPO法人や株式会社などが実施しており、平成26年度は全国160カ所に設置されています。一覧は、若者自立支援中央センターが運営する「ニートサポートネット」で紹介されています。http://www.neet-support.net/
用語解説
注1【アウトリーチ】医療・福祉等の分野で、ケアが必要であるにもかかわらず、施設に通うことができない人々に、専門家が自分から出向いて支援する取り組みを指す。引きこもっている無業者の所へ支援者が訪問し、本人や家族に働きかけることなども、重要なアウトリーチと考えられる。 注2【ソーシャル・キャピタル】社会や地域での信頼関係や結びつきを表す概念で「社会関係資本」と訳される。ソーシャル・キャピタルが蓄積された社会では、相互の信頼や協力が得られやすいため、経済や教育、健康や幸福感の面でも良い影響がみられることについて、政治学者のロバート・パットナムによる実証研究など、さまざまな研究が進められてきた。 注3【ウイーク・タイズ】アメリカの社会学者・グラノヴェターが提唱した概念で、“ゆるやかな結びつき”を意味する。頻繁に接する会社や家族などとの強い結びつき(ストロング・タイズ)よりも、頻繁に会わなくても、信頼を維持しつつ付き合っている友人、知人とのゆるやかな結びつきの方が、自分が気づかない長所や思いがけない可能性を発見することに役立つという考え方で用いられることが多い。
いよいよ就活がスタート!! [就職・働く]
12月1日から会社説明会や就職ナビの登録が始まり、就職活動(就活)が本格的にスタートします。今から、どのような準備が必要なのか、キャリアインストラクターの小寺良二さんに聞き、まとめました。
「働く」って何?
キャリアインストラクター 小寺良二さん
係のイメージ
就活に臨むに当たり、そもそも、働くとは、どういうことなのか。あらためて考えてみたいと思います。
私の働くイメージは、小学校の時の、クラスの係のイメージです。掃除係、美化係、保健係、図書係、給食係などありましたよね。働くことを考える時には、この係のイメージを持つと分かりやすいと思います。
係には、ある共通点があります。それはクラスのためになることをしているということ。どの係も役割は違いますが、その係の役割を果たすことでクラスの皆が気持ち良くなり、学校生活が楽しくなります。係の人もクラスの人から感謝され、充実感を得られます。
クラスは社会の縮図といえるでしょう。社会の中にも係が必要です。その係が「仕事」であると思います。
どんな仕事も社会を良くするため、人々に心地良い生活を送らせるためにあるのです。
志を持つ人材に
今、「働く」を考える時、個人に焦点が当たり過ぎて、「自分自身が働きやすい会社」を探すという考えが強くなっています。でも仕事は、自分のためだけでなく、社会のため、人のためにやることでもあります。
どのような仕事という役割を通じて、社会に貢献したいか。その視点で考えることが必要です。結局は、そうした志を持っている人材を採用担当者も採りたいからです。いい仕事をするからお金はもらえます。いい仕事をするには、志が必要なのです。
将来的に独立し、起業するなど、働き方にはさまざまな道がありますが、一度、サラリーマンとして働くのは、とてもよい経験になります。
新卒を採用することは、会社にとっても、大きなチャレンジです。若い人に期待し、若い人を育てようとの思いがあるからこそ採用するのです。
だから、会社で働くことは成長のチャンスにほかなりません。若い時に会社で苦労した経験は、その後の人生にも大きくプラスに働くと思います。
何から始めればいい?
学内のセミナーを活用する ゆったり考える時期に
就活を目前に控え、「何から始めればいいのか分からない」と焦る学生も多いでしょう。
12月になると怒濤の勢いで会社の説明会が始まり、就職ナビの登録、希望会社へのエントリーシート提出など、具体的にどこの企業を選ぶか、それがメーンの活動になります。インターネットの情報を常にチェックし、メールの確認を怠ることもできなくなります。
ただ、今の時点では、まだ何も就活をしていないという人の方が多いでしょう。焦る必要はありません。11月は準備期間として、落ち着いて自己分析し、12月から始まる就職活動の仕方を知る機会にすればいいのです。
学内のキャリアセンター(就職課)では、有益な情報を提供し、セミナーも行っています。充実した企画が多いので、まだ何もしていない学生は、積極的に大学の就活行事に参加するようにしてください。12月からは日程が立て込むからこそ、11月は人生をゆったり考える時期にしたいものです。
やりたい仕事がない
知らないのが当たり前 情報を集めて動こう
就活に臨むに当たって、多くの学生がまず思うのが、「やりたい仕事がない」「行きたい業界も分からない」ということ。
明確にやりたい仕事が決まっている友人と比較し、自分は遅れてしまっているのではと思ってしまうことも。
しかし、その状況はごく当たり前のことです。今の時期に、なりたい職業が決まっている人の方が実際には少ない。決まっている人の多くは、アナウンサーとか、医者とか、よく知られている職業を志望する人でしょう。
学生が知っている職業は、実は全体のほんのわずかです。世の中には、例えば、施工管理や、商品の部品を作る会社など、学生が知らない会社がたくさんあります。
知名度はなくても、世界でトップレベルのシェアを握り、発展している企業はたくさんあります。だから、今、知っている会社の中だけで、自分に適した会社を探すのは、無理があるのです。
「入りたい会社がなくて当然」と考えてスタートしましょう。
失敗を防ぐために
自分が入れる企業を見分ける力を
「就職うつ」と表現されるほど、就活で苦労する人が多いのは、社会問題の一つといえます。なぜ、就活は大変なのでしょうか。
一つの要因として、学生自身が自分がどこに入れそうなのか、分かっていない点にあります。
大学受験では、塾や予備校で模試を受け、自分の偏差値が分かりました。客観的にどの大学に入りやすいのかが分かったのです。受かる可能性の高い大学と、低い大学をバランスよく受けるなど、具体的な戦略を練れました。いい意味で、受かる可能性の低い大学は割り切ることができたのです。
しかし、就活は自分がどのような企業に向き、採用される力があるのか、客観的な情報がほとんどありません。自分の立ち位置が分かりません。だから、余計に苦労が多く、迷いやすいのです。
就活を成功させるには、「自分が入れる適切な企業を把握する力」を身に付けることが必要です。行きたい業界でも、相性が悪ければ、何社受けても不合格になりやすい。
一方で、相性が合う業界であれば、大手であれ合格する可能性が上がります。
試験の合否で相性を判断
ただ、自分が入れる企業、相性の良い業界がどこなのかを見極めるのは難しい。実際に試験を受け、通るかどうかで感触を知り、見極めていく必要があります。
例えば、ソニー、東芝のような知名度のある電機大手に入ろうとした場合、もし1次試験で受からなければ、同じような知名度のある電機業界を受けても厳しいでしょう。
逆に、1次試験に受かるなら、他の同じ業界大手にも受かる可能性は高いといえます。
そのように自分で実際に受けてみて感触を探り、志望する会社の優先順位を早めに切り替えていくことが求められるのです。
業界の絞り込みは危険?
大手も中小企業もバランスよく
業界、職種をある程度、絞ることで、内容の深い自己PRを考えることができるため、絞り込む人も多いでしょう。ただ、特定の業界、職種だけに偏ってエントリーシートを提出するのは避けるべきです。
学生の失敗例で特に多いのが、「この業界しか行きたくない」と決めつけてしまうパターン。どんなに優秀で将来性がある人でも、業界との相性があるので、分野の違う業界を複数、選ぶべきです。
会社の規模も、大手から中小まで幅広く狙いましょう。大手だけしか受けない場合、8月になっても一つも内々定がもらえないという事態が起こり得ます。大手はどこも競争率が高い狭き門。大手を受けると同時に中小企業もきちんと応募しましょう。魅力的な中小企業はたくさんあります。
就活に励む友人と小まめに連携を
自分を鼓舞する意味でも、意識して就活に頑張っている人と連携を取ること。就活中は孤独になりがちですが、失敗体験も含め、何でも話せる友人、家族がいれば、前に進む大きな力になります。
30社以上を目安に足を運ぼう
60~100社程度にエントリーし、内定をもらうまでには、30~50社の入社試験を受けるのが平均です。10社程度の試験で落ちても落ち込む必要はありません。30社を目安に、足を運ぶようにしましょう。
宝探しゲームの感覚で
就活は宝探しゲームと似ています。宝の入っていない空箱はたくさんありますが、続けていけば、必ず宝が見つかるのです。試験に落ちても、自分に合う会社はここではなかったのだと気楽に捉え、宝探しゲームを楽しむくらいの感覚で臨むことが、就活を乗り切る秘けつかもしれません。
「働く」って何?
キャリアインストラクター 小寺良二さん
係のイメージ
就活に臨むに当たり、そもそも、働くとは、どういうことなのか。あらためて考えてみたいと思います。
私の働くイメージは、小学校の時の、クラスの係のイメージです。掃除係、美化係、保健係、図書係、給食係などありましたよね。働くことを考える時には、この係のイメージを持つと分かりやすいと思います。
係には、ある共通点があります。それはクラスのためになることをしているということ。どの係も役割は違いますが、その係の役割を果たすことでクラスの皆が気持ち良くなり、学校生活が楽しくなります。係の人もクラスの人から感謝され、充実感を得られます。
クラスは社会の縮図といえるでしょう。社会の中にも係が必要です。その係が「仕事」であると思います。
どんな仕事も社会を良くするため、人々に心地良い生活を送らせるためにあるのです。
志を持つ人材に
今、「働く」を考える時、個人に焦点が当たり過ぎて、「自分自身が働きやすい会社」を探すという考えが強くなっています。でも仕事は、自分のためだけでなく、社会のため、人のためにやることでもあります。
どのような仕事という役割を通じて、社会に貢献したいか。その視点で考えることが必要です。結局は、そうした志を持っている人材を採用担当者も採りたいからです。いい仕事をするからお金はもらえます。いい仕事をするには、志が必要なのです。
将来的に独立し、起業するなど、働き方にはさまざまな道がありますが、一度、サラリーマンとして働くのは、とてもよい経験になります。
新卒を採用することは、会社にとっても、大きなチャレンジです。若い人に期待し、若い人を育てようとの思いがあるからこそ採用するのです。
だから、会社で働くことは成長のチャンスにほかなりません。若い時に会社で苦労した経験は、その後の人生にも大きくプラスに働くと思います。
何から始めればいい?
学内のセミナーを活用する ゆったり考える時期に
就活を目前に控え、「何から始めればいいのか分からない」と焦る学生も多いでしょう。
12月になると怒濤の勢いで会社の説明会が始まり、就職ナビの登録、希望会社へのエントリーシート提出など、具体的にどこの企業を選ぶか、それがメーンの活動になります。インターネットの情報を常にチェックし、メールの確認を怠ることもできなくなります。
ただ、今の時点では、まだ何も就活をしていないという人の方が多いでしょう。焦る必要はありません。11月は準備期間として、落ち着いて自己分析し、12月から始まる就職活動の仕方を知る機会にすればいいのです。
学内のキャリアセンター(就職課)では、有益な情報を提供し、セミナーも行っています。充実した企画が多いので、まだ何もしていない学生は、積極的に大学の就活行事に参加するようにしてください。12月からは日程が立て込むからこそ、11月は人生をゆったり考える時期にしたいものです。
やりたい仕事がない
知らないのが当たり前 情報を集めて動こう
就活に臨むに当たって、多くの学生がまず思うのが、「やりたい仕事がない」「行きたい業界も分からない」ということ。
明確にやりたい仕事が決まっている友人と比較し、自分は遅れてしまっているのではと思ってしまうことも。
しかし、その状況はごく当たり前のことです。今の時期に、なりたい職業が決まっている人の方が実際には少ない。決まっている人の多くは、アナウンサーとか、医者とか、よく知られている職業を志望する人でしょう。
学生が知っている職業は、実は全体のほんのわずかです。世の中には、例えば、施工管理や、商品の部品を作る会社など、学生が知らない会社がたくさんあります。
知名度はなくても、世界でトップレベルのシェアを握り、発展している企業はたくさんあります。だから、今、知っている会社の中だけで、自分に適した会社を探すのは、無理があるのです。
「入りたい会社がなくて当然」と考えてスタートしましょう。
失敗を防ぐために
自分が入れる企業を見分ける力を
「就職うつ」と表現されるほど、就活で苦労する人が多いのは、社会問題の一つといえます。なぜ、就活は大変なのでしょうか。
一つの要因として、学生自身が自分がどこに入れそうなのか、分かっていない点にあります。
大学受験では、塾や予備校で模試を受け、自分の偏差値が分かりました。客観的にどの大学に入りやすいのかが分かったのです。受かる可能性の高い大学と、低い大学をバランスよく受けるなど、具体的な戦略を練れました。いい意味で、受かる可能性の低い大学は割り切ることができたのです。
しかし、就活は自分がどのような企業に向き、採用される力があるのか、客観的な情報がほとんどありません。自分の立ち位置が分かりません。だから、余計に苦労が多く、迷いやすいのです。
就活を成功させるには、「自分が入れる適切な企業を把握する力」を身に付けることが必要です。行きたい業界でも、相性が悪ければ、何社受けても不合格になりやすい。
一方で、相性が合う業界であれば、大手であれ合格する可能性が上がります。
試験の合否で相性を判断
ただ、自分が入れる企業、相性の良い業界がどこなのかを見極めるのは難しい。実際に試験を受け、通るかどうかで感触を知り、見極めていく必要があります。
例えば、ソニー、東芝のような知名度のある電機大手に入ろうとした場合、もし1次試験で受からなければ、同じような知名度のある電機業界を受けても厳しいでしょう。
逆に、1次試験に受かるなら、他の同じ業界大手にも受かる可能性は高いといえます。
そのように自分で実際に受けてみて感触を探り、志望する会社の優先順位を早めに切り替えていくことが求められるのです。
業界の絞り込みは危険?
大手も中小企業もバランスよく
業界、職種をある程度、絞ることで、内容の深い自己PRを考えることができるため、絞り込む人も多いでしょう。ただ、特定の業界、職種だけに偏ってエントリーシートを提出するのは避けるべきです。
学生の失敗例で特に多いのが、「この業界しか行きたくない」と決めつけてしまうパターン。どんなに優秀で将来性がある人でも、業界との相性があるので、分野の違う業界を複数、選ぶべきです。
会社の規模も、大手から中小まで幅広く狙いましょう。大手だけしか受けない場合、8月になっても一つも内々定がもらえないという事態が起こり得ます。大手はどこも競争率が高い狭き門。大手を受けると同時に中小企業もきちんと応募しましょう。魅力的な中小企業はたくさんあります。
就活に励む友人と小まめに連携を
自分を鼓舞する意味でも、意識して就活に頑張っている人と連携を取ること。就活中は孤独になりがちですが、失敗体験も含め、何でも話せる友人、家族がいれば、前に進む大きな力になります。
30社以上を目安に足を運ぼう
60~100社程度にエントリーし、内定をもらうまでには、30~50社の入社試験を受けるのが平均です。10社程度の試験で落ちても落ち込む必要はありません。30社を目安に、足を運ぶようにしましょう。
宝探しゲームの感覚で
就活は宝探しゲームと似ています。宝の入っていない空箱はたくさんありますが、続けていけば、必ず宝が見つかるのです。試験に落ちても、自分に合う会社はここではなかったのだと気楽に捉え、宝探しゲームを楽しむくらいの感覚で臨むことが、就活を乗り切る秘けつかもしれません。