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無業社会と向き合う ~今できること・目指すところ~ [就職・働く]

 若年無業者の増加は顕著で、今や、若者たちの16人に1人が無業状態にあるといわれています。
自立支援を受けた当事者と、そのご家族に対して調査を行ってきました。それによれば、彼らの多くは決して怠けているわけではなく、ほとんどが働くことへの意欲を持ち、実際に7割以上は過去に何らかの就労経験があるのです。

 職場での人間関係の悩み、就職活動での挫折――無業に陥るきっかけはさまざまです。殊に近年は、本人にとって不可避な理由から無業となるケースが増えています。

 高学歴であっても、企業倒産やリストラに直面して無業となった人や、激烈な労働環境が原因で病気やけがを患い、働けなくなってしまったという人も少なくありません。

 ともかく、「若者の誰もが無業に陥る可能性があり、そこから脱出することは難しい」という現状を、多くの人に知ってほしいと思います。

 無業状態に悩むご本人、またお子さんを持つご家族に伝えたいのは、「無業状態自体を恥ずかしがる必要はない」ということです。

 本人や家族が無業を「恥」と感じてしまうと、その苦境について、誰かに相談することは難しくなります。結果、行政やNPOによる支援が遅れ、問題が長期化する要因にもなりかねません。

 大切なのは、現状を認識して今後の進むべき道筋を考えること。その上で、本人の不安の源を突き止めて解決する。インターンシップやジョブトレーニングを通して、仕事への意欲や自信を呼び覚ます――このような段階的な支援の枠組みが必要になります。

 また、「第三者の助けの手を借りる」ことをためらわないでほしい。これまでの経験、そして調査研究の結果から考えても、若者本人の努力や家族の助けだけでは、無業状態から脱け出すのは困難だからです。

 どのような支援にせよ、まずは、苦しんでいる若者がどこにいるのか「発見」することから始まります。もし身の回りに無業で悩む若者がいるなら、躊躇せずに誰かが代わりになって「ここに苦しんでいる人がいる」と伝えてください。

 本人が難しいのならば家族が、家族でも難しいなら、地域や何らかの関わりを持つ周囲の誰かが代わりに声を上げてほしい。本人のもとに、行政や支援団体がたどり着くだけでも、問題解決の可能性は確実に広がります。

自立に向けた支援のプロセス

 無業状態にある若者の自立を支援するためには「①発見→②誘導→③支援→④出口→⑤定着」という過程を踏みます。支援組織にもそれぞれ得意分野があるので、状況に応じて、複数の窓口に当たることを心掛けましょう。

① 発見

 「発見」は、まさに支援組織が苦しんでいる若者を見つける最初の段階。無業状態のお子さんを抱える親御さんが、行政の窓口や自立支援組織に相談を持ちかけ、時機を見て本人を連れてくる場合が多いようです。

 無業の本人は苦しんでいるからこそ、自ら行動を起こしづらい状況にあります。親や家族、友人らの助けが重要です。


② 誘導

 無業の若者とコンタクトした後に「誘導」が始まります。本人が目標に向けて、一歩前へ踏み出せるように決心を促す段階です。

 何をすればいいのかも分からず、駆け込み的に支援組織を頼る無業の若者には、自立のために何から始めればいいのかについて、支援スタッフとの相談を重ねながら探っていきます。


③ 支援

 目標が決まれば、就労へ向けての「支援」が始まります。育て上げネットが実施している“ジョブトレ(就労までの基礎訓練プログラム)”では、まず週5日以上働ける体力を付けるために、体を動かす作業を伴う労働体験や、ITなどのスキル形成からスタートします。

 その後、インターンシップなどを通じ、実際の職場の人間関係に慣れてもらう、というように支援を進めていきます。


④ 出口

 「出口」は、就職を具体的に後押しする段階です。

 彼らはすでに、週5日以上働くことができる体力も付き、また人間関係のある職場がどういうものかを理解しています。

 残る問題は、条件に合った労働環境や雇用形態の仕事に巡りあえるか、そして本人が勇気を出して社会への一歩を踏み出せるかどうかだけです。


⑤ 定着

 最後は「定着」。就職後の苦労を乗り越えていく段階です。

 働き始めた若者たちから寄せられる相談に応じる一方、「就職先でできた後輩の面倒をみるようになったことで、仕事への新たな意欲が生まれ、苦労を乗り越える力になった」という報告をよく聞きます。

 そんな小さなきっかけも、根気強く働き続けるためのエネルギーになるようです。 


無業の若者に接する際のポイント 「本人は動けない」を前提に

 無業であることの不安や恥ずかしさは、本人にとっては切実な問題です。まず、「無業の若者本人が主体的に行動することは難しい」という前提に立ちましょう。そうすれば、「いつかは動き出すだろう」との安易さによって、問題が長期化する事態を防ぐこともできます。


ゴールは「働き続ける」こと

 職に就く以上に大切なのは、本人が働き続けられるようになることです。職業体験プログラムの目的は、本人に合う職種を見つけてもらうことです。裏を返せば「今の自分にはできそうにないこと」を理解して、「今できること」にエネルギーを集中してもらう狙いもあります。


複数の窓口に支援の相談を

 複数の支援窓口に相談するようにしましょう。そうすることで、より客観的に問題解決への道筋を考えられるからです。また支援団体を選ぶ際、居住地域からの距離に幅を持たせるのも一つの手。近くにある支援先だと周囲の目が気になり、支援を受けなくなる場合があるからです。


若年無業者の相談窓口 認定NPO法人 育て上げネット

 工藤さんが理事長を務め、東京・立川市で若者自立支援を行っている認定NPO法人。問い合わせ先は、育て上げネット042(527)6051まで。日曜・祝日を除く午前9時~午後6時まで受け付けている。http://www.sodateage.net/


地域若者サポート ステーション

 地域若者サポートステーション(サポステ)は、厚生労働省が認定した全国のNPO法人や株式会社などが実施しており、平成26年度は全国160カ所に設置されています。一覧は、若者自立支援中央センターが運営する「ニートサポートネット」で紹介されています。http://www.neet-support.net/

用語解説
 注1【アウトリーチ】医療・福祉等の分野で、ケアが必要であるにもかかわらず、施設に通うことができない人々に、専門家が自分から出向いて支援する取り組みを指す。引きこもっている無業者の所へ支援者が訪問し、本人や家族に働きかけることなども、重要なアウトリーチと考えられる。  注2【ソーシャル・キャピタル】社会や地域での信頼関係や結びつきを表す概念で「社会関係資本」と訳される。ソーシャル・キャピタルが蓄積された社会では、相互の信頼や協力が得られやすいため、経済や教育、健康や幸福感の面でも良い影響がみられることについて、政治学者のロバート・パットナムによる実証研究など、さまざまな研究が進められてきた。  注3【ウイーク・タイズ】アメリカの社会学者・グラノヴェターが提唱した概念で、“ゆるやかな結びつき”を意味する。頻繁に接する会社や家族などとの強い結びつき(ストロング・タイズ)よりも、頻繁に会わなくても、信頼を維持しつつ付き合っている友人、知人とのゆるやかな結びつきの方が、自分が気づかない長所や思いがけない可能性を発見することに役立つという考え方で用いられることが多い。





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