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アルコール依存症 [アルコール依存症]

合併症は身体と精神の多岐に
垣渕洋一センター長
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 「アルコール依存症」はよく耳にする病気ですが、近年、女性と高齢の患者が急増し、あらためて注目されています。この病気について、成増厚生病院・東京アルコール医療総合センター(東京都板橋区)の垣渕洋一センター長に聞きました。



大切なものより飲酒を優先
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 アルコール依存症については、疑いのある人が全国で440万人、治療の必要な患者が80万人いるとの調査があります。

 最近は、女性と高齢の患者が著しく増加しています。男性では、定年退職後に時間ができて日中から飲むようになり、依存症になる人が増えています。

 この病気の離脱症状(禁断症状)には、別表のようなものがあります。

 アルコール依存症で大きな問題となるのは、量を多く飲んでしまう、TPO(時、場所、場合)をわきまえずに飲酒してしまうなどの「コントロール障害」です。例えば、毎回、翌日の遅刻や欠勤につながるほど飲み過ぎたり、本来、飲酒すべきでない出勤前などに飲んでしまったりする状態です。

 このように、「家族、仕事、趣味など大切なものよりも、飲酒を優先させてしまう」病気なのです。

 原因は、習慣的な多量飲酒です。ただし、なりやすい人と、なりにくい人がいます。遺伝要因と環境要因の両方が関係していますが、詳しいメカニズムは分かっていません。

 習慣的な飲酒開始から依存症になるまで、男性は20~30年、女性はその半分程度かかるといわれています。

 この病気が、家庭内暴力、虐待、家庭崩壊などの家族的問題や、職場の欠勤、失職、借金など多くの社会的問題を引き起こすことがあります。

 最近、問題になっている常習飲酒運転者の多くは、多量飲酒者かアルコール依存症の人であることが分かっています。

週2日連続して休肝日を

 多くの病気が合併することが、アルコール依存症の恐ろしさでもあります。

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 一気飲みによる急性アルコール中毒では、生命維持をつかさどる脳幹に影響が及んで急死することもあります。アルコール依存症の身体合併症は、肝障害、膵炎、糖尿病、高血圧、心筋症、高脂血症など全ての臓器に及ぶといっても過言ではありません。

 アルコールは麻酔薬のように脳細胞の働きを抑え、破壊します。特に前頭前野という部分が傷むと衝動的になります。

 アルコール依存症の人の4割がうつ病を合併しています。うつ病として10年間治療を受けて、やっとアルコール問題が表面化する方もいます。アルコール依存症の人が飲酒を続けると、自殺に至ってしまうリスクは、一般の60~120倍にも達するという報告があります。また脳萎縮が若い時から起こり、60歳になると、半数が認知症の入り口に立っています。

 晩酌をする方の中には「夜、お酒を飲まないと一日が終わった気がしない」と一日も欠かさない人がいます。この場合、量が度を越えて増えていかず、健康、仕事、家庭に問題がなくても、「常用量依存」という状態になっています。

 一日の酒量が日本酒換算で3合(ビール中びん3本、25度焼酎300ミリリットル程度)以上であれば、要注意です。

 このような方は、近親者の死や自身の体調不良など負のライフイベントをきっかけとして、アルコール依存症になる可能性があります。

 「週に2日、連続して休肝日を設ける」努力をするとともに、お酒以外のストレス解消法や楽しみを見つけましょう。


断酒には2年ほどかかる

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【常用量依存】週2日、連続して休肝日をつくる努力を。毎日、日本酒換算で3合以上飲む人は、特に注意。お酒以外のストレス解消や楽しみを見つけることも大切だ

 アルコール関連の問題度を数値化し、依存度の目安となる「スクリーニングテスト」と呼ばれるものがあり、早期発見に役立ちます。確定診断には、医師のもとで、主に世界保健機関(WHO)や米国精神神経学会が作成した診断基準が使用されます。

 また、依存症と診断されなくてもその手前の状態の人も多くいます(「有害な使用」「ハイリスクな飲酒」等と呼ばれます)。

 この場合、節酒を心掛けましょう。月1回程度の指導で行える「HAPPY(ハッピー)プログラム」という節酒プログラムがあり、推進している行政もあります。

 アルコール依存症の治療には、飲酒抑制剤や抗酒薬による薬物治療などが用いられます。入院して「解毒治療」「リハビリ治療」を行うこともあり、退院後のアフターケアも重要です。

 治癒のためには、断酒するしかありません。長期間にわたって断酒しても、再び飲酒すると多くがコントロール障害に陥るため、生涯、断酒しなければなりません。

 断酒には2年ほどかかります。治療開始から2年後の断酒継続率は20~40%程度です。専門的な指導が必要で、家族の理解も重要です。

 早期発見、早期治療が望ましいことは当然ですが、早期の場合、本人が認識することが難しく、「断酒するほどではない」と思っていることも多くあります。家族が依存症に気付いても本人が認めない時は、次のような専門機関への相談をお勧めします。本人が受診を拒否していれば、家族の方だけでも相談するとよいでしょう。

 ●精神保健福祉センター、保健所

 ●アルコール依存症専門医療機関

 ●自助グループ

 自助グループとは、断酒の継続を目的としたアルコール依存症患者による市民団体です。集って自己の体験を語ることが基本で、断酒継続に有効です。
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