秋の生活をフレッシュに スマホ依存に気をつけて [スマホ依存]
インタビュー 久里浜医療センター 院長 樋口進さん
スマートフォン(多機能携帯電話、以下スマホ)が普及し、通話だけでなく、生活のあらゆる場面で手軽にインターネットやゲームなども楽しめるようになりました。便利さ故に、必要以上にスマホをいじり続けてしまう人も。最近は「スマホ依存」「ネット依存」といわれ、過度な使用に警鐘を鳴らす声が高まっています。秋の生活をフレッシュにスタートするために、スマホとの付き合い方を一度、考えてみませんか。『ネット依存症のことがよくわかる本』(講談社)を監修した久里浜医療センター(神奈川・横須賀市)の樋口進院長に聞きました。
ネット専門外来設置
2年前から久里浜医療センターでは、ネット依存に関する専門外来を設けました。現在はパソコンのオンラインゲームに依存した子どもの治療が中心ですが、スマホに関する相談も徐々に寄せられています。
ただスマホは、普及してまだ数年。実態がつかめきれていません。スマホ依存は病気ですが、どのような状態をスマホ依存と呼ぶのか、必ずしも明確ではないのが現状です。長い時間、スマホのサービスを使い続けて、本来やるべきことがなおざりにされているという問題が起きています。私たちはスマホ使用が原因で、家庭、仕事、健康などに問題が発生すれば、治療の対象にします。
スマホには動画、ネット、ゲーム、SNSなど、熱中してしまう楽しいサービスが詰まっています。しかも、手軽に持ち運べ、いつでも遊べるので、依存性は高い。①スマホを常にいじる②スマホがないとイライラする③本来やるべきこと(部屋の掃除、仕事、人付き合いなど)がおろそかになる――ことが増えてきたら、依存体質になっていると注意するべきです。自分で自覚していなくても、他人からスマホの見過ぎ、使い過ぎを指摘されたら、赤信号。自分の生活スタイル、スマホとの付き合い方を見直しましょう。
企業は、利用者が夢中になるアプリの開発に励んでいるので、普通にスマホを使えば、依存症のような状態になることは不思議ではありません。今も多くのゲームアプリがありますが、今後もスマホの機能が向上するにつれ、これまで以上に強い依存性をもつものが出てくるでしょう。
新しいサービスだから、人気があるからといった理由で、安易に利用するのではなく、それらが依存性をもち、実生活を乱す可能性があるというリスクを知った上で、上手に利用してほしいと思います。
事例
寝る前のほっとした時間に息抜きのつもりでスマホを見るが、ツイッターやゲームで盛り上がり、そのまま熱中。気付いたら深夜の午前3時、4時まで遊んでしまう。睡眠不足で生活リズムが乱れ、仕事にも集中できず、食事も不規則に。
日中もスマホのことで頭がいっぱいになり、学校の勉強や仕事にも集中できなくなる。
◇
夫がいつもスマホに気をとられているので、意思の疎通ができずに妻は不満。しかし、夫はきちんと仕事に行き、家にもお金を入れているので問題ないと思っている。スマホを使うのを何よりも優先する夫に妻は嫌気がさし、離婚問題にまで発展するケースも。
対策
毎日の記録を取ろう
スマホを使っている時間を記録してみましょう。思っている以上に長い時間であることに気付くものです。
適度な使用の範囲を超えて、過度に使っているならば、自分なりの目標を立て、少しずつ使用時間を減らす努力が必要です。
スマホの使用時間をコントロールすることは、一日の生活時間を見直すことにもなります。
特にスマホの使用で生活リズムが崩れているのであれば、早めに改善しましょう。
「自分ルール」を作ろう
生活リズムを立て直すには、自分のルールを作ることが肝心です。①寝る前は、ベッドにスマホを持ち込まない②日中は、スマホをかばんに入れておき、頻繁に見られないようにする③外出時にはあえて充電器は持ち歩かない――など、使用を制限するルールが効果的です。使用するにしても、例えばSNSは朝起きた時と昼休みだけチェックするなど、使う時間をコントロールすることで、生活リズムが改善されます。
インターネット依存度テスト
ネット依存症になっていないか、確認してみよう
あてはまるところにチェックをいれてください。
①=全くない ②=まれにある ③=ときどきある ④=よくある ⑤=いつもある
1 気がつくと思っていたより、長い時間インターネットをしていることがありますか
2 インターネットをする時間を増やすために、家庭での仕事や役割を疎かにすることがありますか
3 配偶者や友人と過ごすよりも、インターネットを選ぶことがありますか
4 インターネットで新しい仲間をつくることがありますか
5 インターネットをしている時間が長いと周りの人から文句を言われたことがありますか
6 インターネットをしている時間が長くて、学校の成績や学業に支障を来すことがありますか
7 他にやらなければならないことがあっても、まず先に電子メールをチェックすることがありますか
8 インターネットのために、仕事の能率や成果が下がったことがありますか
9 人にインターネットで何をしているのか聞かれたとき防御的になったり、 隠そうとしたことがどれくらいありますか
10 日々の生活の心配事から心をそらすためにインターネットで心を静めることがありますか
11 次にインターネットをするときのことを考えている自分に気がつくことがありますか
12 インターネットのない生活は、退屈でむなしく、つまらないものだろうとおそろしく思うことがありますか
13 インターネットをしている最中に誰かに邪魔をされると、イライラしたり、怒ったり、大声を出したりすることがありますか
14 睡眠時間を削って、深夜までインターネットをすることがありますか
15 インターネットをしていないときでもネットのことばかり考えていたり、ネットをしているところを空想したりすることがありますか
16 インターネットをしているとき「あと数分だけ」と言っている自分に気がつくことがありますか
17 インターネットをする時間を減らそうとしても、できないことがありますか
18 インターネットをしていた時間の長さを隠そうとすることがありますか
19 誰かと外出するより、インターネットを選ぶことがありますか
20 インターネットをしていないと憂うつになったり、イライラしたりしても、再開すると嫌な気持ちが消えてしまうことがありますか
チェックを右の点数で計算し、合計をだしてください
①=1点 ②=2点 ③=3点 ④=4点 ⑤=5点
判定
20~39点 平均的なユーザー
40~69点 インターネットによる問題あり。ネット使用が生活に与える影響を考えよう
70~100点 ネット使用に重大な問題あり。治療が必要
キンバリー・ヤング作〈『ネット依存症のことがよくわかる本』(講談社)参照〉
記者もやってみた
別掲のインターネット依存度テストをやってみた。「インターネット」の文字を「スマホ」に読み替えて答えてみると56点に。70点から治療開始と書かれているから、危なめだ。
一日のスマホをいじっている時間も記録した。起床後、スマホでメールやニュースをチェック。出勤中の電車でも、スマホを触り、帰りの電車もぼーっとし始めると、何気なくスマホに手が伸びていた。自覚はしていたつもりだが、思いのほか、スマホを触る時間が長かった。
私の場合、一日当たり平均3~4時間はスマホを触っている。一日のうち起きている時間を18時間とすると、その6分の1もスマホをいじっている計算。今後も同じ時間を費やすと、残りの人生の6分の1をスマホとお付き合いすることになってしまう。これは「もったいない」。
あえて距離をとる
ということで、早速、自分ルールを決めた。
まず、「食事中はスマホをかばんの中に入れる」。手元に置かない時間を増やし、昼休みや帰宅時のみ、チェックするように心掛けた。重要な連絡もあるため、まったく見ないわけにはいかないが、意識的にスマホと距離を取ることで、イライラした時に、思わずスマホをいじるといった行動は減った。
「寝る時はスマホをベッドに持ち込まない」ことも決めた。これまで目覚まし時計代わりにスマホを使っていたが、ほかのもので代用。寝る前にスマホを見ないことで、幾分、目覚めがよくなった気がする。
仕事でも、日常生活でも、スマホはとても便利で不可欠なツールだが、意識して一定の距離を置くことで、ストレスが減ると実感した。
便利な時代こそ、自己を管理する力が問われる。自分ルールは、守れないことも多々あるが、今回の挑戦で、スマホに翻弄されるのではなく、主体的にスマホを使いこなす利用者に一歩成長できた気がした。
スマートフォン(多機能携帯電話、以下スマホ)が普及し、通話だけでなく、生活のあらゆる場面で手軽にインターネットやゲームなども楽しめるようになりました。便利さ故に、必要以上にスマホをいじり続けてしまう人も。最近は「スマホ依存」「ネット依存」といわれ、過度な使用に警鐘を鳴らす声が高まっています。秋の生活をフレッシュにスタートするために、スマホとの付き合い方を一度、考えてみませんか。『ネット依存症のことがよくわかる本』(講談社)を監修した久里浜医療センター(神奈川・横須賀市)の樋口進院長に聞きました。
ネット専門外来設置
2年前から久里浜医療センターでは、ネット依存に関する専門外来を設けました。現在はパソコンのオンラインゲームに依存した子どもの治療が中心ですが、スマホに関する相談も徐々に寄せられています。
ただスマホは、普及してまだ数年。実態がつかめきれていません。スマホ依存は病気ですが、どのような状態をスマホ依存と呼ぶのか、必ずしも明確ではないのが現状です。長い時間、スマホのサービスを使い続けて、本来やるべきことがなおざりにされているという問題が起きています。私たちはスマホ使用が原因で、家庭、仕事、健康などに問題が発生すれば、治療の対象にします。
スマホには動画、ネット、ゲーム、SNSなど、熱中してしまう楽しいサービスが詰まっています。しかも、手軽に持ち運べ、いつでも遊べるので、依存性は高い。①スマホを常にいじる②スマホがないとイライラする③本来やるべきこと(部屋の掃除、仕事、人付き合いなど)がおろそかになる――ことが増えてきたら、依存体質になっていると注意するべきです。自分で自覚していなくても、他人からスマホの見過ぎ、使い過ぎを指摘されたら、赤信号。自分の生活スタイル、スマホとの付き合い方を見直しましょう。
企業は、利用者が夢中になるアプリの開発に励んでいるので、普通にスマホを使えば、依存症のような状態になることは不思議ではありません。今も多くのゲームアプリがありますが、今後もスマホの機能が向上するにつれ、これまで以上に強い依存性をもつものが出てくるでしょう。
新しいサービスだから、人気があるからといった理由で、安易に利用するのではなく、それらが依存性をもち、実生活を乱す可能性があるというリスクを知った上で、上手に利用してほしいと思います。
事例
寝る前のほっとした時間に息抜きのつもりでスマホを見るが、ツイッターやゲームで盛り上がり、そのまま熱中。気付いたら深夜の午前3時、4時まで遊んでしまう。睡眠不足で生活リズムが乱れ、仕事にも集中できず、食事も不規則に。
日中もスマホのことで頭がいっぱいになり、学校の勉強や仕事にも集中できなくなる。
◇
夫がいつもスマホに気をとられているので、意思の疎通ができずに妻は不満。しかし、夫はきちんと仕事に行き、家にもお金を入れているので問題ないと思っている。スマホを使うのを何よりも優先する夫に妻は嫌気がさし、離婚問題にまで発展するケースも。
対策
毎日の記録を取ろう
スマホを使っている時間を記録してみましょう。思っている以上に長い時間であることに気付くものです。
適度な使用の範囲を超えて、過度に使っているならば、自分なりの目標を立て、少しずつ使用時間を減らす努力が必要です。
スマホの使用時間をコントロールすることは、一日の生活時間を見直すことにもなります。
特にスマホの使用で生活リズムが崩れているのであれば、早めに改善しましょう。
「自分ルール」を作ろう
生活リズムを立て直すには、自分のルールを作ることが肝心です。①寝る前は、ベッドにスマホを持ち込まない②日中は、スマホをかばんに入れておき、頻繁に見られないようにする③外出時にはあえて充電器は持ち歩かない――など、使用を制限するルールが効果的です。使用するにしても、例えばSNSは朝起きた時と昼休みだけチェックするなど、使う時間をコントロールすることで、生活リズムが改善されます。
インターネット依存度テスト
ネット依存症になっていないか、確認してみよう
あてはまるところにチェックをいれてください。
①=全くない ②=まれにある ③=ときどきある ④=よくある ⑤=いつもある
1 気がつくと思っていたより、長い時間インターネットをしていることがありますか
2 インターネットをする時間を増やすために、家庭での仕事や役割を疎かにすることがありますか
3 配偶者や友人と過ごすよりも、インターネットを選ぶことがありますか
4 インターネットで新しい仲間をつくることがありますか
5 インターネットをしている時間が長いと周りの人から文句を言われたことがありますか
6 インターネットをしている時間が長くて、学校の成績や学業に支障を来すことがありますか
7 他にやらなければならないことがあっても、まず先に電子メールをチェックすることがありますか
8 インターネットのために、仕事の能率や成果が下がったことがありますか
9 人にインターネットで何をしているのか聞かれたとき防御的になったり、 隠そうとしたことがどれくらいありますか
10 日々の生活の心配事から心をそらすためにインターネットで心を静めることがありますか
11 次にインターネットをするときのことを考えている自分に気がつくことがありますか
12 インターネットのない生活は、退屈でむなしく、つまらないものだろうとおそろしく思うことがありますか
13 インターネットをしている最中に誰かに邪魔をされると、イライラしたり、怒ったり、大声を出したりすることがありますか
14 睡眠時間を削って、深夜までインターネットをすることがありますか
15 インターネットをしていないときでもネットのことばかり考えていたり、ネットをしているところを空想したりすることがありますか
16 インターネットをしているとき「あと数分だけ」と言っている自分に気がつくことがありますか
17 インターネットをする時間を減らそうとしても、できないことがありますか
18 インターネットをしていた時間の長さを隠そうとすることがありますか
19 誰かと外出するより、インターネットを選ぶことがありますか
20 インターネットをしていないと憂うつになったり、イライラしたりしても、再開すると嫌な気持ちが消えてしまうことがありますか
チェックを右の点数で計算し、合計をだしてください
①=1点 ②=2点 ③=3点 ④=4点 ⑤=5点
判定
20~39点 平均的なユーザー
40~69点 インターネットによる問題あり。ネット使用が生活に与える影響を考えよう
70~100点 ネット使用に重大な問題あり。治療が必要
キンバリー・ヤング作〈『ネット依存症のことがよくわかる本』(講談社)参照〉
記者もやってみた
別掲のインターネット依存度テストをやってみた。「インターネット」の文字を「スマホ」に読み替えて答えてみると56点に。70点から治療開始と書かれているから、危なめだ。
一日のスマホをいじっている時間も記録した。起床後、スマホでメールやニュースをチェック。出勤中の電車でも、スマホを触り、帰りの電車もぼーっとし始めると、何気なくスマホに手が伸びていた。自覚はしていたつもりだが、思いのほか、スマホを触る時間が長かった。
私の場合、一日当たり平均3~4時間はスマホを触っている。一日のうち起きている時間を18時間とすると、その6分の1もスマホをいじっている計算。今後も同じ時間を費やすと、残りの人生の6分の1をスマホとお付き合いすることになってしまう。これは「もったいない」。
あえて距離をとる
ということで、早速、自分ルールを決めた。
まず、「食事中はスマホをかばんの中に入れる」。手元に置かない時間を増やし、昼休みや帰宅時のみ、チェックするように心掛けた。重要な連絡もあるため、まったく見ないわけにはいかないが、意識的にスマホと距離を取ることで、イライラした時に、思わずスマホをいじるといった行動は減った。
「寝る時はスマホをベッドに持ち込まない」ことも決めた。これまで目覚まし時計代わりにスマホを使っていたが、ほかのもので代用。寝る前にスマホを見ないことで、幾分、目覚めがよくなった気がする。
仕事でも、日常生活でも、スマホはとても便利で不可欠なツールだが、意識して一定の距離を置くことで、ストレスが減ると実感した。
便利な時代こそ、自己を管理する力が問われる。自分ルールは、守れないことも多々あるが、今回の挑戦で、スマホに翻弄されるのではなく、主体的にスマホを使いこなす利用者に一歩成長できた気がした。
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