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「音楽の力」は、絶対に消えない。 [音楽・ジャズ]

ha-bi-.PNG自身のバンドとともに圧巻のパフォーマンスで観衆を魅了したのが、ジャズ界の伝説的ピアニスト、ハービー・ハンコックさんでした。音楽が持つ力を信じ、70歳を超えてもなお新たな挑戦を続けるハービーさんへのインタビューをお届けします。

 うねるようなベースラインが印象的な楽曲「アクチャル・プルーフ」からコンサートはスタートした。
 ピアノ、シンセサイザー、ショルダーキーボードを流麗に奏でていくハービーさん。その後も、「ウオーターメロン・マン」「スピーク・ライク・ア・チャイルド」「カンタループ・アイランド」といった代表曲を、バンドメンバーとの変幻自在のアレンジで、次々と演奏していった。
  
 普段から自然な形で、仲間と集まってセッションし、お互いに刺激し、鼓舞し合いながら音楽を生み出すことを目指しています。
 無理やりでも、強制的でもなく、自然な衝動から導かれる音楽を創造する――。それが人々を励まし、インパクトを与え、ひいては、人類にポジティブな影響を広げていくことを願っているんです。
  
 会場を見渡すと、皆、体のどこかを動かしてリズムに乗りながら、ステージから届く音に聴き入っているのが分かった。
 コンサート前に行われた記者会見。“最近は、音楽を心から楽しむ時間や余裕、また音楽そのものに親しむ人の数が減っているようにも感じます”――そんな記者の気持ちを率直に伝えると、ハービーさんは笑顔を交えて答えてくれた。
  
 確かに、いたずらに人々の気を引こうとするものであふれかえっている世の中ですね。私も先ほど、携帯電話の電源を切りましたし。
 タブレット端末やスマートフォンの発達。日々の生活が、さまざまな技術に支配されているように思います。ただ、私たちは何とかして、それらの技術と共存する方法を習得していくでしょう。
 それに、歴史を振り返ると、市民権運動や平和運動には、必ず音楽が、テーマソングがありました。
 音楽には、人々を結びつける偉大な力があり、平和と調和をもたらしてくれます。私たちが熱望する「人間らしい社会」を築くには、これらの要素は不可欠です。
 若い時代に流行していた音楽を聴くと、当時の楽しい思い出や悲しい出来事を自然と思い出すものです。若いころは、周りの影響を受けやすく、弱く傷つきやすい時期。だから音楽に励まされ、鼓舞されるわけです。
 当然ですが、人生は“山あり谷あり”ですよ。もしかしたら同じように、今、音楽を取り巻く状況は“谷”なのかもしれません。
 でも、心配は無用です! 音楽が力を失うことは、絶対にありませんから!
 先月、自身の半生を記した著書『ポッシビリティーズ(可能性)』を刊行(邦訳は未刊)。74年の人生で得た経験や教訓についてまとめたという。
 ハービーさんは2005年に、この本と同じタイトルのアルバムを発表している。ジョン・メイヤー、クリスティーナ・アギレラ、スティングといった多彩なタレントとの共演が話題を呼んだ作品だ。
 コラボレーション――それはハービーさんにとって、新たな可能性を開くための原動力ともなっている。
  
 新しいことや、新しい組み合わせに挑戦し続ける勇気と好奇心を持ち続けてきました。
 それは自分自身を再発見し、自分の可能性を伸ばすことにもつながるんです。
  
 ライブのアンコールで披露されたのは、レコード盤をこする際に発生する音“スクラッチ”を世界に知らしめた1983年の大ヒット曲「ロックイット」。
 当時、まだ誕生して間もない音楽ムーブメントだったヒップホップとの大胆なコラボレーションは高く評価され、音楽界最高の栄誉であるグラミー賞が贈られた。
 音楽は国境も世代も超える。それゆえにハービーさんは、自身の根底に「全ての人々と全ての音楽へのリスペクト」があると明快に語る。そして、今後も多くの「アイデアをもたらしてくれる、新しい若い才能を持った人たち」とのコラボレーションを、強く望んでいる。
  
 私にとって重要なのは、その時々で、自由な選択ができるということ。その瞬間、強く感じたことを音楽で表現することです。
 そうしていけば、多彩な人たちと仕事をするチャンスができます。もし、ずっと同じメンバーとばかり演奏していたら、そのような機会には恵まれませんからね。
 一緒に仕事をしてくれたメンバーは、もしかしたら、私から何か学ぶものがあったかもしれない。でも、多くの人たちとともに仕事をしてきた中で感じるのは、「むしろ私の方こそ、彼らから学ぶことができている」という思いなんです。
 生涯、学び続けたい――私はそう思っています。人生を学ぶ“学生”であり続けるということ。それこそが、私にとって大切なんですよ。
■プロフィル  ハービー・ハンコック 1940年生まれ。世界的なジャズピアニスト、作曲家。62年にデビュー、翌年から68年までジャズ界の大御所マイルス・デイビスのバンドに参加。73年に「ヘッド・ハンターズ」を結成し、ダンス・ミュージックとの融合でジャズ界に新風を巻き起こす。グラミー賞の受賞は14回。2002年、03年の「東京JAZZ」では音楽監督を務めた。
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