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やっぱり数学って大事! [数学・数学の芸術]

 「数学って、何の役に立つの?」――学生時代、そう思ったことはありませんか。今、その数学がひそかなブーム。あらためて学び直す社会人も増えています。数学を学ぶ利点と魅力は何か。サイエンスナビゲーターの桜井進さんに聞きました。
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「問題解決能力」育てる サイエンスナビゲーター 桜井進さん
 近年、数学や統計学に関する書籍に人気が集まっています。ビジネスの場でも重宝される統計学だけでなく、数学に関する本がここまで売れているのは、世界的にも珍しい現象です。

 数学は、人類が積み重ねてきた英知の結晶であり、一つの「芸術」とも形容できます。何より数学の歩みとは、問題に対して、絶えず新しい考え方を提示して乗り越えてきた歴史でもあります。

 問題を解くためには、問題内容を理解・整理し、それを数学的な記述の仕方に翻訳するという過程を経る必要があります。その行為は「考える」という作業の根本ともいえるでしょう。

 また具体的な数値を扱う「算数」とは違い、数や形をはじめとするさまざまな概念を用いる数学は、高い汎用性を持ちます。故に、数学的思考はあらゆる場面で役に立つのです。

 仕事だけでなく日々の生活の中でも、私たちは多くの問題に直面しています。時には、解決すべき問題の存在に気付いていない場合もあるでしょう。

 問題を発見し、その本質を見抜き、解決するにはどうすればいいのか。そして、自分の問題解決能力を高めるためには、どんな努力が必要なのか。

 大人になってから数学を学び直そうという人が増えているのは、多くの人が問題解決能力や発想の転換といった頭の働きと、数学的思考が関連していることに気付いているという証明かもしれません。


【問題を解いてみた】 問. 円周率が3.05より大きいことを証明せよ。[東京大学 2003年入試問題]
 数学が大の苦手だった記者が証明問題に挑戦してみた。

 問題文を眺めて30分が経過。「やはり無理」と投げ出しかけた時、「円に内接する正多角形の辺の和」を「円周の長さ」に近づける、というアイデアを奇跡的に思い付く。その後は「三平方の定理」を武器に、掛け算・割り算を繰り返し、何とか解答にこぎ着けた(はずだ)。

 15年ぶりの数学。気付いたことがある。まずは忍耐の大切さ。諦めずに、もがき続けた必死さが、解答へのアイデアを連れてきてくれたように感じた。

 そして目標が明確になった時、人はさらに頑張れるという事実。「このことさえ示せれば」という道筋が見えてからは、試行錯誤の過程に喜びすら覚えるようになっていた。

 テストには点数が付く。他人とも比較される。しかし数学を解く過程そのものは、諦めそうな「自分」との戦いだった。何という発見。この感動を高校時代の自分に語ってやりたい……。

学べばこんなに役に立つ

夏の高校野球の試合数は?
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問題を読み替える

 手に負えないように思える問題も、別の視点から考えると簡単に解決できる場合があります。数学を学ぶことで、多くの公式や考え方を組み合わせ、問題に対する新しいアプローチを模索する力を養うことができます。

 夏の高校野球のように大規模なトーナメント戦は「1試合につき1チームが負ける」仕組み。最終的に勝ち残るのは1校のみなので、試合数は「トーナメント出場校-1」で求められます。



“美しさ”に法則はある?

パターンを見抜く
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 周期性やルールを見つけることも数学的思考の一つ。バラバラに見えるパターンの中に「何か法則はないか」と考える能力は、新発見をもたらす原動力にもなるでしょう。

 歴史的な芸術作品の多くに見られる、長さの比率が「1:約1.6」となる「黄金比」は有名。芸術家たちが直観的に美しさを感じた比率と考えるのが自然ですが、レオナルド・ダ・ビンチは、黄金比を意図的に作中に織り交ぜていたようです。



仕事が山積み。どうしよう……

自分の思考を整理
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 数学は解答に至るまでの思考の過程を重視します。途中計算や考え方を書く中で、間違いや別の解き方に気付くことも。自分の考えを整理し、正確に相手に伝える能力が身に付くのです。

 例えば、縦軸を仕事の「重要度」、横軸を「緊急度」として座標系を描き、抱えている仕事の状況を分類してみます。すると、漠然としていた仕事内容が整理され、優先順位が付けやすくなったのではないでしょうか。



日本の少子化って深刻なの?

視覚化・数量化する
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 言葉だけでは伝わりづらいことでも、図やグラフを描くことで、全体像が明確になります。変化の過程を見通したい場合や、論点をずらさずに問題の本質を把握したい時にも大切な観点です。

 昨年の日本の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産むとされる子どもの数)は1.41。人口ピラミッドのグラフを見ると、60歳代の人口は新たに生まれた0歳児の2倍以上であることが分かります。



誕生日ケーキをうまく分けたい

ゴールからの逆算
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 目指すゴールに、どうたどり着くかを考えるのは、数学的思考の特徴です。証明問題のように結論があらかじめ提示されている場合は、ゴールから一つ一つ論理をさかのぼって解答までの道筋を考えることが必要です。

 円形のケーキを分ける時、360度を人数分で割った角度で切り分ければ均等になります。誕生日を迎える人にケーキを多く分けるには「360÷人数分」より大きい角度で取り分ければいいのです。



■「過程」を知ればコワくない

「割引」と「ポイント還元」

 買い物の時によく目にする「割引」と「ポイント還元」。一体、どちらの方が得なのでしょうか。例として1万円分の買い物をした場合を考えます。

 まずは割引。1万円の商品が10%引きとなっているなら、商品は9000円で購入できます。一方、ポイント還元では、還元率が10%の時、1万円分の買い物につき1000ポイントが加算されます。ここで、1ポイント=1円ならば、さらに1000円分の買い物ができます。

 ポイント還元で得した分を計算で確かめてみると、1万円(実際に支払った値段)÷1万1000円(購入した商品の値段)=0.909≒90.9%。つまり、割引率は9.1%となり、「割引」よりも小さいのです。



存在しない平均値!?
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 日常の多くの場面で「平均値」が判断の材料にされます。ただし、平均値をうのみにすることの危険性を知っておくことが大切です。

 あるクラスが行った数学のテストの平均点は、「クラス全員の得点の和÷生徒数」として得られる数値。全体の中で自分がどの位置にいるかを知りたい時、真ん中を表す平均は便利な指標です。

 ところが、もし数学のテストで10点と90点だけに得点が集中した場合、平均点が50点と計算されても、クラスに50点の生徒はいません。この時、平均は大きな意味を持たなくなります。「平均値」だけで自分の位置を考えると、無理が生じます。

 多くの事柄は、一つの指標だけでは判断できません。数値の「背後」を考える習慣を付けましょう。

■身の回りにある「スウガク」

グランドピアノと楽譜
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 弦楽器を使って1オクターブの音階を鳴らしてみましょう。すると最初の「ド」の音から、1オクターブ上の高い「ド」を鳴らす際に、弦の長さが半分になることが分かります。

 ここで、xオクターブ高い「ド」を鳴らす弦の長さyは、右の図の数式で表されます。この関数が描く曲線は、まさにグランドピアノを上から見た形なのです。実際のピアノでは、低音部の長い弦を斜めに張るなどの工夫が施されています。

 また、楽譜は縦軸で音程、横軸に時間の経過を示した“グラフ”と見ることができます。楽譜により音楽を数値化・視覚化したことで、どんな曲でも時代を超えて、同じように演奏することが可能になったのです。



コピー用紙の法則
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 普段使っているコピー用紙には「A4」や「B5」などの規格がありますが、どのサイズも縦横の長さの比率が「1:√2」になっています。

 この比率によって、A3を縦に半折りにするとA4に、さらに折るとA5にと、サイズが半分で同じ形(相似)になるようになっています。

 では、A判とB判の関係はどうなっているのでしょうか。実は、A4の対角線は、B4の長い辺の長さと一致します。A4の短い辺の長さを1とすると、「三平方の定理」からB4の長い辺は√3であると分かります。

 A4とB4の面積の比は、1:1.5に決められています。A4と、その2倍の面積を持つA3の中間の大きさがB4なのです。



因数分解とネットセキュリティー
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 「因数分解」は、何の役に立つのかと疑問に思わせる面倒な計算。しかし、その計算の面倒さがインターネットの安全を守る暗号システムに利用されています。

 ある数を素数の積に分けることが「素因数分解」です。素数とは「1とそれ自身でしか割り切ることのできない数」。例えば「12」は、素数2と3を用いて「2×2×3」と素因数分解されます。

 では「8453」の因数分解はどうでしょうか。答えは「79×107」ですが、掛け算をするのは簡単でも、逆の因数分解は難しいものです。大きな数になると、コンピューターでも素因数分解することは困難です。

 暗号システムは、大きな2つの素数で暗号をつくり、解くための鍵にするという仕組みとすることで、容易に破られない暗号を実現しています。
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