誰だって「天才」になれる [教育]
誰だって「天才」になれる
東大法学部首席の弁護士 山口真由さんに聞く
努力とは根性論ではなく、方法論が大事!
「天才」と聞くと、何を連想しますか? 何でもこなす万能の持ち主でしょうか。『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』(扶桑社出版)の著者・山口真由さんは、周囲から天才と呼ばれ続けた一人です。その山口さんに、なるほどの“天才への道”を聞きました。
これまで学習塾に一度も通わず、東大に現役合格した山口さん。
彼女は在学中、司法試験と国家公務員採用総合職試験に合格。東大法学部を首席で卒業し、財務省に入省した。まさに天才というにふさわしい経歴だろう。
実は昔から、天才と呼ばれることにコンプレックスを抱いていました。勉強したこと以外の内容を尋ねられても答えられないと知っていたからです。
でも、周囲の期待に応えたかった私は、プレッシャーを勉強への意欲に転換できました。
私には特別な才能はありません。そんな自分だからこそ、努力を続けられる方法論を見いだせたのです。
努力しても継続できない人が多い。それは努力についての認識に誤りがあるから、と山口さんは提唱する。
日本では、努力することを根性論で捉えている方が多いですよね。スポ根マンガにありがちな、「気合いだ!」と我慢を強要するイメージ(笑い)。
努力すれば暮らしが良くなるとされた高度経済成長期では、我慢は美徳という考え方があっても良かったと思います。でも昨今は、国内総生産(GDP)が伸びず、努力しても報われない場合もあります。それゆえ、努力することはダサイ、カッコワルイとなっちゃって、継続できない若者が増えてきたのではないでしょうか。
なぜ努力する対象を勉強に選んだのか?
私は跳び箱4段を跳んで骨折するほど、根っからの運動オンチだったんです(笑い)。コンプレックスの塊だった私に、父が教えてくれました。
「世の中、簡単にお金はもらえない。だから“誰もできないこと”をするか、“誰もが嫌がること”をするしかない」と。
わりと勉強は得意だったので、消去法で努力の対象に勉強を選んだわけです。しかも勉強は、やった分だけ見返りもあるので。
山口さんを語る際に外せないのが、司法試験の時の勉強法だ。
司法試験の口述試験の2週間前のこと。毎日、19時間半の勉強を続けた結果、「蛍の光」が幻聴で聞こえてきたんです。結局、試験日まで幻聴はやまず、会場の待合室でも歌をハミングしていました。周囲からは、変人に映ったに違いありません(笑い)。
でも、この経験を機に、自身の限界を知れたのは大きかった。大変で多忙な時も、“あの時に比べたら”と耐えられるようになりました。
では、天才への代表的な方法論とは?
努力する際、最もやってはいけないのが、“自分との戦い”にしてしまうことです。もちろん、どの分野でも突き詰めれば、努力は弱い自己との戦いになるのですが、そこで勝ち抜けることができるのは一握りの人です。
ストイックな生活を強いて孤独な戦いに挑むと、たいていはうまくいかないもの。身近にライバルを見つけて一緒に頑張ることで、努力は継続しやすくなります。その他、いくつかまとめたので参考にしてみてください。
4月は新たな門出を迎え、“さあ、頑張ろう!”と努力を開始する若者も多い。夢を追う青年たちに贈る言葉を――。
頑張りすぎずに頑張ることが、継続の鍵です。気合いを入れて何かを始めようとすると勢い余って、息切れしてしまいがち。
小さな成功体験を積み重ね、“今日はこんなに頑張った”と、自分で自分を褒めてあげることです。自分への信頼、自分への期待を決して失わず、夢に向かって一歩ずつ進んでいってください。
努力を続けるためのメソッド
1 4分野の中から得意なものを磨く
ビジネスで求められるのは、アウトプット・インプットする力。アウトプットでは「書く」「話す」こと、インプットでは「読む」「聞く」ことがあげられます。努力する対象は、4つの中から最も得意な分野を選び、磨いていくと良いです。
例えば、努力する対象を「読む」に選んだ方は、使う教本は1冊にするべき。多くの教材を学ぶよりも、1冊に絞ったほうが記憶に定着するからです。さらに、時間をかけて読了するより、ざっと7回読むこと。読むという作業の抵抗感を軽くしましょう。
2 食事の時間で1日を3分割する
努力の継続には、1日の時間の振り分けが重要で、その目安として適しているのは食事です。私は昼食を14時頃、夕食を20時頃に取って1日を3分割することで、高い集中力を維持しています。昼食が定時の方は、朝食を早めに取ると効果的です。
3 道具を1つにし、見える化を図る
使うアイテムは、1つにこだわることがポイント。例えばペンだと、中身のインクが見えるものをお勧めします。液体が減っていく様子を確認でき、努力の見える化によって、“私はこれだけ頑張ったんだ”と実感を持てるからです。
4 ルールの中に「抜け道」を作成
努力する上でルール作成は不可欠ですが、厳格すぎると息抜きさえできず、長く続きません。ゆえに「抜け道」を設け、自分を納得させるための正当な理由をつけることが肝心です。「禁酒すること。しかし、祝いの席での飲酒はOK」という具合に。
5 毎晩1分、自身と向き合う時間を
同じ作業を繰り返していると、気付かぬうちに心がすさんでしまうことがあります。それを防ぐために、1日の終わりに自分と向き合う時間をつくり、その日を振り返るといいでしょう。私は日記を続けられないので、夜空を眺めながら、反省するようにしています。
■プロフィル やまぐち・まゆ 1983年、北海道生まれ。2002年、東京大学法学部に入学。在学中の3年時、司法試験に合格。4年時、国家公務員採用総合職試験に合格。06年、東大法学部を首席で卒業後、財務省に入省し、租税政策に従事する。09年、弁護士登録。企業法務と刑事事件を受け持つ傍ら、ニュース情報番組「モーニングCROSS」(TOKYO MX)にレギュラー出演するなど、コメンテーターとしても活躍中。
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