若きクライミングの天才「デビッド・ラマ」さん [冒険]
若きクライミングの天才
〈2008年、絶壁を素手で登るフリークライミングのW杯総合優勝を果たしたデビッド・ラマさん。映画「クライマー」では、南米の峻峰“セロトーレ”の頂に挑戦する姿を追う〉
山頂で見えるもの――
それは強い意志と
新たに見つけた自分。
――クライミングの魅力とは何でしょうか。
自然の脅威と間近で対峙できることが、大きな魅力です。もちろんリスクはあります。しかし、だからこそ、自分がなぜ存在しているのか、また何がしたいのか、ということがより研ぎ澄まされ、深く考えられるのです。これは日常生活において、何か困難に立ち向かう時にも同じようなことがいえると思います。
――セロトーレという、さらなる高みに挑戦しようと思った理由は?
私は、他の人が不可能と言っていることに、挑戦することに引かれます。もし、他の誰かが成し遂げたことなら、確実に自分にもできるはず。しかし、不可能だとされることは、答えを自分で見いださなければいけません。そのことに私は、たまらなく心が突き動かされるんです。
――そして、そのセロトーレの頂上にもあなたは立たれました。
3度目の挑戦でやっと、“自分のスタイル”で登頂することができました。当初は競技クライマーの気分が抜けなくて、さまざまな失敗もしました。それでも、その事実を正面から受け止め、登ってみせるという強い意志で挑戦し続け、登頂することができた。
頂上から見た美しい光景は、一生忘れることはないでしょう。また、登攀を通して、自身を見つめ直すことができ、新たな自分を知ることができました。
――あなたは、なぜ山に登るのでしょうか。
人間にとって、もっとも美しいことだからです。また、私にとって山に登ることが、自身の個性を一番よく表現できるのです。
私は自分で登った山に、一つのラインが見えます。それは、登頂した行程を示すもので、その時の感情や登頂スタイルなど、全てを思い起こすことができます。つまり、登ることが自分は誰であるかという表現であり、一つのアートにもなっているのです。
〈映画「クライマー パタゴニアの彼方へ」は、8月30日から、東京・新宿ピカデリーほか全国で公開〉
■プロフィル
1990年、オーストリア生まれ。2008年にクライミング競技で史上最年少の世界王者に。ロッククライミングの技術を磨きながら、世界的に著名なアルピニストへの変容を遂げている。
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