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1%の奇跡 誰かのために生きる [心の繋がり]

 都道府県別の平均寿命で、男女とも1位の長野県。短命な人も多かった同県で住民の健康増進に努めてきたのが、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さんです。患者との出会いから気付いた、人生を変える“1%の不思議な力”について、鎌田さんに聞きました。
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日本一の“長寿県”
 私は諏訪中央病院に赴任した40年ほど前から、この地で「健康づくり運動」を始めようと、住民に呼び掛けてきた言葉があります。

 「1%だけ生活習慣を変えてみませんか――」

 冬の寒さが厳しく、漬物など、塩を使った保存食が定着していた長野県。県民の多くは塩分の取り過ぎで高血圧となり、脳卒中で亡くなる人も少なくありませんでした。

 でも、身に付けた習慣を変えるのは大変です。そこで、100%変えるのは無理でも「1%」なら変われるのではないか、と思ったのです。

 そして減塩の効果が表れてきたら、次は「野菜を食べる量を増やしませんか」「質の良い脂に変えてみませんか」と。一つずつ取り組んでもらい、日本一長寿の地域づくりに成功しました。

 この成功の大きな要因は、住民の「人との絆」です。

 私はよく、村人の家でご飯を食べさせてもらい、食文化を学んでいました。すると、その思いが伝わり、私の健康増進の講演会に知人も誘って来てくれるように。人情味の厚い県民性のおかげです。

思いやりホルモン
 長野県民の長寿の理由として、高齢者の就業率の高さも挙げられます。つまり「生きがい」を持っているかどうかが関係しています。

 生きがいは「誰かの役に立つこと」でも感じられるでしょう。こうした行動も長寿につながることが、科学的にも徐々に解明されてきました。

 人を大切にすると、脳内に「オキシトシン」という神経物質が分泌。“思いやりホルモン”とか“幸せホルモン”と呼ばれるもので、高血圧を防ぐ作用があるのです。

 私たちがこのホルモンを出すためには、まず、「1%は誰かのために生きること」が近道といえるでしょう。

まな板のトントン

14年前に拙著『がんばらない』を世に出しながらも、全力で生きてきた人間です。その私が100%の力を注ぎながら、「あと1%」が大切なことに気付いたエピソードを紹介します。

 ――膵臓がんを患った73歳の男性。本人の意思と家族の同意で手術は行わず、抗がん剤での治療を続けましたが、やがて肝臓に転移。緩和ケア病棟に入院となりました。

 男性は「やるだけのことはやった」。100%生きたと思っていました。

 ところが、奥さまがご主人の一時帰宅を希望したので、私は半日だけ認めることにしました。

 病室に戻った男性は笑顔で「トントンがよかった」と。自宅で夕日を眺めていたら、奥さまが料理する、まな板の音が聞こえてきたそうです。

 意識して聞いたことがない音に“生きてきてよかった”と感じ、食べられなくなっていたご飯を、少しだけ口に。「もう思い残すことはない」と語ってくれました。

 あと1%、日常の営みの中で生きることが大切であり、この時こそ人生は輝きを増すことを知りました。

 たとえ退院できなくても、院内で工夫できることはないか考えてみてください。

優しさとは想像力

 私は、どんな時もあきらめません。患者と一緒に生きる意味を探し、あと1%にこだわる医療を続けています。

 その中で「余命数カ月」と言われた人が、元気になって何年も生きた事例をたびたび見てきました。

 こうした“1%の奇跡”を起こすには、本人の「生きたい」「生きていてよかった」との思いが不可欠で、時には周囲の協力も必要です。

 ――ある日、緩和ケア病棟に入院中の末期がんの男性が「ジゴボウが食べたいな」とつぶやきました。

 ジゴボウとは、店では手に入りにくいキノコの一種。秋には山で採れますが、すでに晩秋だったので見つかるかは分かりません。でも、看護師たちは何回も山に入ってついに見つけ、男性にジゴボウのみそ汁を作りました。

 「うれしくて、泣きながら食べた」と、大満足の思いを手紙につづった男性。優しさとは、他者への想像力であることを実感しました。

 人間は、自分を大事に「利己的」に生きながら、他人をも大切に「利他的」に生きられる動物です。1%は誰かのために――そんな思いが広がっていけば、より良い社会になると考えています。

■プロフィル  かまた・みのる 1948年、東京都生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。74年、長野県の諏訪中央病院に赴任し、地域住民と「健康づくり運動」を実践。海外ではチェルノブイリ原発事故の救援活動、イラクでの医療支援などを継続。ロングセラー『がんばらない』(集英社)など、作家としても活躍している。

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