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陰で信念を貫く“斬られ役”の美学 俳優 福本清三さん [芸能ニュース]

 東映京都撮影所の役者として、長年活躍してきた俳優の福本清三さん。いわゆる“斬られ役”などを演じ、主役を立ててきたことから“5万回斬られた男”とも呼ばれる。その福本さんが初主演の映画『太秦ライムライト』が7月12日から全国公開される(現在、関西で先行上映中)。作品が投げ掛けるメッセージを考えながら、福本さんの生き方と美学に迫った。
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 「ずっと、斬られ役をやってきましたし、その中で“あいつ、頑張っとるな”と誰かが見ていてくれれば、それだけでいいと思ってきた。その斬られ役が今回は主役。えらいことです。こんな話が実現するとは(笑い)」

 浪人姿で迎えてくれた福本さんに、初主演の感想を聞くと相好を崩した。本年、俳優人生は56年に。始まりは15歳の時。丁稚奉公に行った京都で、縁あって親戚が話を通してくれたのが東映京都撮影所だった。

 「役者を目指していた訳ではないし、やるとも思っていなくて、来てみたら“映画だ”と。驚きながら、何も分からない世界に飛び込んだんです。当時は、大部屋役者が400人はいて、にぎやかでしたね」

大部屋役者として

 大部屋役者とは、大部屋を使い、そこで支度をしていた大勢の無名の俳優たちの通称。物売り、足軽、死体、猿回し、船頭……。日ごとに与えられる幅広い役を休みなく、時に命がけで取り組む表現者だ。

 太秦に関わる人から「フクちゃん」と愛されてきた福本さんの本名は、橋本という。名が変わった時のエピソードはユニークだ。

 「大部屋役者は、例えば『侍 橋本』と、名前が掲示板に書かれて仕事を確認するんですけど、同姓の先輩が言うんです。“お前、名前変えろ! ややこしい!”(笑い)。上の人に言われたら“はい!”と言うしかない時代。何でその名が思い浮かんだか分からないですけど、その場で“福本さんっておられますか?”“おらん”“じゃあ、福本にしてください”と。それからです(笑い)」

 この逸話には、おおらかさとともに、大部屋役者の代わりはいくらでもいる――当時あった、そんな認識もにじみ出るようだ。“大部屋らしい”空気感が伝わってくる。

 作品を支える役者であるが、エキストラのため、時に使い捨ての存在のような思いもする。そんなジレンマの中で、福本さんは自分自身の演技を磨いた。

 「“つらい”とか、いろんなことが自分の中にあったとしても、評価されるには、まず自分が頑張るしかない。端役でも“認められるぐらいやってやろう!”と。それは大部屋役者だけの話ではないですよね」

倒れ方を試行錯誤
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 時代劇の立ち回りで、主役が“立つ”かどうかは、斬られ役の倒され方次第で大きく変わるという。

 日頃の仕事で信頼を勝ち得ていった福本さんは次第に重宝され、大部屋役者の花形の斬られ役を任されていった。

 演技を考える上での参考にしたのは、喜劇王チャップリンだった。

 「チャップリンの映画を見た時、最初はただ笑って見ていたけど、後で“何で笑ったのかな”と思ったらスタントなしですごい倒れ方をしてはる。

 だから、“倒れる商売をしている僕は、見る人が『あっ!』と思うような、痛みを伝える倒れ方をしないといかんな”と気付かせてもらったんです」

 斬られて階段を転げ落ちるなど、試行錯誤し、倒れ方を追求した。代名詞のような“エビ反り”もその一つの形だ。

 のけ反り、カメラに顔を見せつつ倒れるなどの印象的な演技は注目を集め、福本さんは「日本一の斬られ役」として主演役者からも視聴者からも愛されてきた。そして、ハリウッド映画『ラストサムライ』への出演につながっていった。
 
全てに感謝する
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 たとえ取り替え可能に見られる状況下でも、“この人でなくては”と思わせる存在になっていく。そこにあるジレンマとの格闘は、時代や職業が変わっても若者に重なる。

 そして、“今の世にも大部屋がある”と、メディアの伝える仕事環境に関する情報などが頭をよぎる。

 斬られ役の福本さんの生き方と、それが重なる『太秦ライムライト』には、若者へのエールがある。

 陰に徹し抜く役者人生で、福本さんは今回、71歳を迎えて作品への初主演を果たした。「役者人生で大切にしてきたことは?」との質問に、人生哲学を映す言葉が返ってきた。

 「作品は、出演者だけじゃなくスタッフもいれて、大勢の人によってつくられます。だから、自分が使ってもらえるということは喜びなんです。

 僕は今日までやってきてね、周りの人にほんまに助けられてきたんです。“何もしてへんのに、何でこんなに恵まれてるんやろ”って思うことがあるんです。いや、ほんまでっせ(笑い)。

 だから、何よりも全てに感謝することですね

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