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痛み別特集 神経痛 [健康]

rokkannshinkeitu.gif 神経に沿って痛みが出る症状を神経痛と呼びますが、さまざまな種類があります。神経痛について、国際医療福祉大学三田病院の福井康之副院長(脊椎脊髄センター長、整形外科部長)に聞きました。

神経に沿った痛みの総称

 神経痛とは神経に沿った痛みを伴う症状の総称で、疾患名ではありません。
 この痛みは神経の障害によって生じますので、痛みの発生する場所、痛み方やその程度は障害を受ける神経により異なり、また、個人差も大きい特徴があります。
 神経痛が生じた場合、まずはその痛みの原因となる病気(原因疾患)を特定することが大切ですが、特発性といって、はっきりとした原因が分からないケースもあります。
 近年、高齢社会の到来により神経痛患者、特に脊椎疾患に関係する神経痛患者は増加しています。これは骨粗しょう症による圧迫骨折や、腰部脊柱管狭窄症などの加齢に伴う疾患により、脊椎の神経が圧迫されて坐骨神経痛や大腿神経痛などの障害が生じやすくなっているからです。
 神経痛が疑われた時は、自身の症状について医師に正しく伝えることが大切です。「どのような時に(時間帯や特定の動作の後など)」「どの部位に」そして「どのような痛みがあるか」をできるだけ正確に伝えるように努力しましょう。
 障害を受けている神経によってさまざまな神経痛がありますが、以下に主なものを示します。

上腕神経痛

 首から肩、上腕を通り、症状のひどい時には手の指先までしびれや痛みを感じる神経痛です。両側に生じることもありますが、多くは左右どちらかの片側に生じます。
 原因疾患としては、まず頸椎の椎間板軟骨などが加齢で変形し、神経根を圧迫することで生じる「変形性頸椎症」が挙げられます。
 胸郭出口症候群では、上肢の感覚や運動をつかさどる神経(腕神経叢)が鎖骨周辺で筋肉や骨に挟まれて圧迫された結果、しびれや痛みを生じます。なで肩の女性や重いものを運ぶ労働者に多く見られます。
 頸肩腕症候群では、肩甲骨から上肢にかけて慢性的な疼痛(ズキズキする痛み)を生じます。症状は神経痛に類似していますが、筋肉疲労が主体で、パソコンの使用頻度の高い人など、肩、腕、手を酷使する人によく起こります。
 治療はその原因疾患によって異なりますが、まずは負担の少ない保存的治療から開始すべきで、筋力訓練、ストレッチや装具などから試すことが重要です。
 近年、内視鏡手術に代表される低侵襲手術が流行ですが、安易に手術を受けることは避け、基本的に手術は最終手段と考えるべきです。
 なお、非常にまれですが、肺がんなどの腫瘍が上肢の神経を圧迫して神経痛を生じる場合もあります。安静にしているにもかかわらず激しい疼痛を感じる場合や、悪性腫瘍の既往がある方は注意が必要ですので医療機関を早めに受診することが大事です。

肋間神経痛

 肋骨に沿って痛みが現れる神経痛で、多くは左右どちらかに痛みが生じます。
 不自然な姿勢や疲労によって、一時的に肋間神経に炎症を来して痛みが生じる場合もありますが、さまざまな病気の初発症状として肋間神経痛が生じることも多いので注意が必要です。
 高齢化の進行に伴い、「脊椎圧迫骨折」による肋間神経痛が増加しています。これは骨粗しょう症で脊椎、特に胸椎が圧迫変形することにより、肋間神経が圧迫されて生じます。
 中年以降の女性に多く見られ、激痛で体が一時的に動かせなくなる場合もあります。姿勢の変化で痛みが悪化することが特徴です。エックス線写真で背骨の圧迫変形を認めれば診断できますが、骨折初期には異常を認めないことも多く、早期診断にはMRI(磁気共鳴画像装置)検査が有効です。
 骨粗しょう症では咳や軽微な外傷で肋骨が骨折し、肋骨のズレにより肋間神経痛が生じる場合もあります。ズレが明らかな場合はエックス線写真で確認できますが、わずかな亀裂骨折の場合は画像での確認は困難で、呼吸で痛みが増強するなどの症状で診断します。
 また、背骨や肋骨にがんが転移したために肋間神経痛が生じることもあります。この場合は、安静にもかかわらず増強する持続的な痛みが特徴的です。
 帯状疱疹により、肋間神経痛が生じる場合も少なくありません。帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症ですが、一般的に患部にピリピリした違和感や疼痛が生じた後に帯状の特徴ある発疹が生じます。
 痛みが生じる時点では発疹を認めない場合が多くあります。痛みは通常2週間ぐらいで消失しますが、頑固に続き難治性となる場合もあります。発症にはストレスも関与しているといわれています。
 肋間神経痛の治療は、まず消炎鎮痛薬や湿布を用いて経過を観察します。脊椎圧迫骨折の場合はコルセット、肋骨骨折の場合は胸郭バンドなどの装具が有効です。
 帯状疱疹などで痛みが長引く場合は、神経ブロックの注射をすることもあります。漢方薬、鍼治療や低周波治療などが効果的な場合もありますので、医師に相談しながら、自分に合った薬や対処法を見つけましょう。

坐骨神経痛

 坐骨神経は、臀部から大腿後面を通って下腿(膝から足首)に至る神経で、人体で最大の神経です。
 この神経に沿って痛みを訴える症状が坐骨神経痛です。代表的な原因疾患には、「椎間板ヘルニア」と「脊柱管狭窄症」が挙げられます。
 ●椎間板ヘルニア
 背骨を形成する「椎骨」は、前方に位置する「椎体」と後方の「椎弓」からなり、椎体と椎体の間には、軟骨組織である「椎間板」があります。
 椎間板は、しばしば「あんパン」に例えられます。軟らかいあんこに当たる「髄核」が、パンに当たる「線維輪」に囲まれており、何らかの理由で髄核の一部が出っ張ったり、髄核が線維輪を破って外に出たりするのが、椎間板ヘルニアです。
 髄核が外に出ると神経を圧迫するため、坐骨神経痛が出現するのです。多くの場合、座ると痛くなり、立っていると楽に感じます。
 ●脊柱管狭窄症
 神経が通る管を「脊柱管」と呼びます。加齢に伴いこの管が変形し、中に入っている神経が圧迫されて、おしりから脚にかけて痛みが出ます。これが「脊柱管狭窄症」です。一般に、歩くと痛くなり、座ると楽になります。歩いて痛みを感じても、休むと再び歩けるようになる「間欠跛行」が特徴的です。
      ◇ 
 診断では、患者さんが20~30歳代であれば椎間板ヘルニアを、50歳代以上であれば脊柱管狭窄症を疑います。エックス線写真に加え、MRIによる検査が有効です。
 治療は、まず手術以外の保存的治療をするのが原則です。痛みの強い急性期は安静を保ち、その上で消炎鎮痛剤などの薬物治療の他、温熱療法(赤外線で患部を温める)、理学療法(骨盤けん引や筋力強化)を行います。
 保存的治療の切り札的存在が「ブロック療法」です。これには「硬膜外ブロック」と「神経根ブロック」の2種類があります。
 これらの治療を十分に行っても痛みが続く場合に、はじめて手術を検討します。
 不必要な手術は極力避けるべきですが、筋力低下などの神経まひ症状が出現すると神経の回復力がなくなり、手術しても治らなくなるので、適切な時期を逃さないことが重要です。治療は、専門医によく相談しながら進めてください。


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