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漢方の考え方 [健康]

未病のうちに治す
日本薬科大学学長 丁宗鐵さんkanpou.PNG

 今回のテーマは「漢方」。よく聞く言葉ですが、具体的な内容は知らないという人も少なくありません。そこで、漢方の基本的な考え方などについて、日本薬科大学学長の丁宗鐵さんに聞きました。

日本独自の医学

 日本では、漢方は“中国の医学”と思っている人が多いようです。確かに中国から伝わった医療もありますが、現在の日本でいう漢方は、古くから国内に存在した「和方」に、中国と韓国の医学が融合して独自に発展を遂げたものとなっています。
 また、「漢方=漢方薬」と考えている人もいますが、正確には鍼灸・按摩(マッサージ)・指圧・養生なども漢方の医療に含まれます。
 漢方という言葉が使われるようになったのは、江戸時代の末期。それまで漢方は「医学」と呼ばれましたが、オランダを介してヨーロッパ医学の「蘭方」が広まると、それまでの医学を「漢方」と呼ぶようになりました。
 漢方では、病気の原因は家庭にもあると考えます。食事や睡眠などが乱れた生活は、ゆとりのない暮らしを強いられる社会の問題でもありますが、家族の問題でもあると自覚することが大切です。
 これには儒教が影響しています。「天下を治めるには、まず自分の行いを正し、次に家庭をととのえ、そして国家を治め、天下を平和にする」という考え方です。
 従って、江戸幕府は、長寿や親孝行の人に“報奨金”を出しました。年寄りに温かい社会だったともいえます。

体質は3タイプ

 漢方医が診察で重視することは、患者が「実証・中庸・虚証」のうち、どの体質かを探ることです。
 実証は、血色が良く、いつも元気。食欲旺盛で、めったに風邪をひかず、声が大きいようなタイプです。
 虚証は、疲れやすくて食も細く、よく風邪をひき、声が小さいようなタイプです。
 実証と虚証の間が中庸で、最も健康的なタイプ。血圧や体温、代謝機能などが正常で病気になりにくい状態です。
 一見、実証は健康そうですが、いわゆる“無理が利く”タイプなだけに、実際に無理な生活で体への負担を蓄積しがち。必ずしも「体力がある=健康」ではないことを認識しておきましょう。
 漢方では、実証と虚証は健康といえず、「未病」の段階にあると考えます。未病とは「病気ではないが、健康でもなく、病気に向かっている状態」のことを指します。
 これらの体質は生活習慣などによって決まるため、不規則な食事や運動不足、日常のストレスが大きい人などは、未病の初期といえます。
 西洋医学では病気になってからの治療が主ですが、漢方では未病の段階から治療を。中庸になるように生活習慣を指導したり、漢方薬を処方したりして病気を防ぎます。

養生から摂養へ

 生活習慣の改善を漢方では「摂養」といいます。これは①摂生②養生③保養の三つを合わせた概念です。
 ①摂生は、腹八分目にするなどの適度な食事です。
 食に関する健康法は「何を食べるといいか」との点ばかり注目されますが、まずは、いつも同じ時間に食べることです。体の免疫力を保つには「いつ食べるか」が重要で、時間が不規則だと自律神経が乱れやすくなります。
 ②養生は、喫煙や飲酒の節制、睡眠をきちんと取る等の規則正しい生活習慣です。
 江戸時代の貝原益軒の書籍『養生訓』には、個人レベルでの病気の予防、健康増進の秘訣などが書かれています。摂養はその養生を家族単位で考え、病後の休息の取り方も含めた広い健康観です。
 ③保養は、体を休めて健康を保つこと。現代人は摂生と養生は気にしますが、保養が足りないように感じます。
 保養も家族単位で取ることが望まれます。たとえ仕事が多忙でも、病気で仕事ができなくなったら本末転倒です。自分で体調管理に努めることが大事です。
      ◇ 
 年を取ると、人間は誰でも未病の時期が増えてきます。
 かつては、私も“実証型”の生活でしたが、55歳の時、「このままでは早死にする」と直感。健康診断では、生活習慣病の直前にいる自分に気付かされました。
 そこで、生活習慣を一新して“中庸型”に近づく努力を開始。今では、元気に幸せな日々を送っています。
 未病のうちに予防すれば、健康という“宝”が得られます。何歳から始めても効果がありますので、古代から培われた漢方の考えを取り入れてみるといいでしょう。
■プロフィル  てい・むねてつ 1947年、東京都生まれ。横浜市立大学大学院修了。医学博士。北里研究所東洋医学総合研究所で診察医長、研究部門長を歴任。東京大学大学院医学系研究科・生体防御機能学講座助教授などを経て現職。百済(ひゃくさい)診療所院長。日本東洋医学会専門医・指導医。漢方の名医としてテレビ・ラジオで活躍。著書多数。


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もやもや病 [健康]



印象的な名前で知られる「もやもや病」は、脳の血管に関連する病気です。この病気について、国立循環器病研究センター病院(大阪府吹田市)の中川原譲二・もやもや病専門外来担当部長に聞きました。
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原因 脳の太い血管の狭窄
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 図の左側は、脳を下から見たところです。太い血管は、前側が内頸動脈、後ろ側が椎骨動脈といい、それぞれ左右一対ずつで計4本あります。

 この4本は脳底でつながっていて輪の形になっています(ウィリス動脈輪)。

 2本の内頸動脈は、いずれも前大脳動脈と中大脳動脈に分かれます。椎骨動脈は途中で1本の脳底動脈になり、その後、左右の後大脳動脈の2本に分かれます。これらの血管がさらに枝分かれし、脳全体を網羅するのです。

 もやもや病は、脳の太い血管(内頸動脈)の狭窄(細くなったり、詰まったりする)によって発生します。狭窄が発生する場所は決まっていて、図の右側の、★印の部分です。

 狭窄によって血流が減少すると、脳は血流量を保とうと、さまざまに働き始めます。一つ目は、内頸動脈以外の血管から血流を受け取ります。後大脳動脈が前大脳動脈や中大脳動脈に血液を送ったり、硬膜という脳を包む膜の血管が脳に血液を送ったりすることがあります。

 二つ目は、脳表や脳内の細い血管が拡張して血流を増やします。これには、普段は見えないくらい細い血管も含まれます。

 普段は見えないほどの血管のうち、拡張により、脳血管造影検査で見えるようになる血管を「もやもや血管」と呼びます(写真参照)。たばこの煙のような、もやもやした感じに見えるためで、これが病名の由来です。

 もやもや血管は血流を補うために出現しますが、多くの血流が流れ込むことで負担がかかり、破れて出血することがあります。


症状 虚血型=しびれ等さまざま 出血型=突然の頭痛など
 もやもや病の男女比は1対1・8と女性に多く、約10~15%に家族性発症(家族の中に多く発症が認められる)があります。発症年齢は小児期から成人期まで幅広く、ピークは5歳前後と30歳前後の2回見られます。

 厚生労働省の難治性の特定疾患に指定されているため、治療費に公費が支出されます。

 図の★印部分に狭窄を生じる原因は不明です。ただし前述のように家族性発症が見られることから、ある程度の遺伝的要因があり、そこに加齢、環境要因などが加わって発症に至ると考えられています。

 もやもや病には、①虚血型(脳の血流が足りないことで起こる)と、②出血型(もやもや血管が出血することによる)があります。それぞれの症状を見てみましょう。

 ①虚血型

 片側の手足がしびれる、急に話せなくなるなど、血流が不足する場所によってさまざまな症状が出ます。

 また、症状が出ても数分から数十分で完全に治まり、後遺症も見られないことがあります。これを一過性脳虚血発作(TIA)と呼びます。

 これは「脳梗塞が起こりそうだ」というサインです。例えば、ラーメンやうどんなどの熱いものをフーフーと吹きながら食べた時、一時的に手足の脱力が起こることは、もやもや病の典型的な症状として知られています。

 ②出血型

 出血型では警告症状はなく、突然、頭痛や意識障害が起こり、命に危険が及ぶこともあります。

検査 カテーテルとMRA

 小児と成人では、症状の出方が違います。

 一般に小児期は虚血型で、脳血流の低下による一過性脳虚血発作や脳梗塞が見られます。成人では虚血型と出血型が半々です。

 この病気が疑われたら、病院で検査を受けましょう。診断にはカテーテル検査、もしくはMR血管造影(MRA)が必要です。

 カテーテル検査では、細い管を手か足の動脈から首の辺りまで入れて造影剤を流し、血管の影を見ます。

 MRAは、MRI(磁気共鳴画像装置)の撮り方を少し変えることで、血管を見えるようにするものです。


手術 直接、間接のバイパス

 診断が確定した後は、手術をするかどうかが問題になります。血管が細くなっていても、血流が足りていれば手術は行いません。

 【虚血型の場合】

 最も有効とされている治療は、新たな血液の流れを作る、脳血管のバイパス手術です。

 具体的には、頭の皮膚に行く血管や頭の横の皮膚下にある筋肉などから、脳に血が流れるようにします。手術方法には、直接バイパス術と間接バイパス術の、大きく2通りあります。

 患者さんの状況に応じて、手術法を選択します。両者を組み合わせることもあります。

 ●直接バイパス術

 頭の皮膚に栄養を与えている血管をはく離して、直接、脳の表面の血管と縫い合わせます。細かい作業のため、手術用顕微鏡を使用します。

 血管同士を直接つなぐので、血流が早期から確実に改善しますが、細かい作業のため医師の技術が必要で、手術時間が長くかかります。

 ●間接バイパス術

 筋肉、硬膜、血管などの組織を脳の表面に置くことで、それらと脳が自然にくっ付くことで血流をよくする方法です。

 手術時間が短く比較的簡単ですが、血流の改善には時間がかかります。また、筋肉などと脳の付き具合は個人差が大きく、不確実な面があります。

 【出血型の場合】

 これまで、脳出血を確実に食い止める方法はありませんでした。

 虚血型と同様の直接バイパス手術をすると、再出血の予防効果があるといわれていましたが、賛否両論がありました。しかしこの方法の効果について、昨年、その有効性が科学的に確認されました。
治療後 年に1回は検査を

 手術によって血流が改善した場合、生活上の大きな制限はありません。

 しかし別の血管が細くなることがあるため、次のことには注意してください。

 ①生活習慣病の因子には人一倍気を付ける

 ②無症状でも年に1回は検査を受ける

      ◇ 

 もやもや病では、しばしば、前頭葉の血流不足から起こる「高次脳機能障害」が問題となります。

 これには、記憶障害、注意障害(必要なことに注意を向けられない)、遂行機能障害、対人技能拙劣、病識欠如(自身が病気である自覚の欠如)等が挙げられます。複数を併せもつ症例もあります。医師の説明をよく受け、相談してください。




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きょうのテーマは「発酵食品」 [健康]

発酵パワーの秘密!

 「発酵」とは、簡単に言えば、細菌類や酵母類などの作用によって、人類にとって有益な物質となることです。

 例えば、目の前に、煮た豆があったとすると、悪玉菌が付いた豆は食べられないので「腐敗」。善玉菌(納豆菌)が付いた豆は納豆になり、食べられるので「発酵」となります。牛乳も、発酵すればヨーグルトやチーズになります。

 「腐敗」も「発酵」も、どちらも微生物の活動による作用ですが、人間にとって「有害」なのか「有益」なのかの違いなのです。

 今や、私たちの生活は、「発酵」なくして成り立たないといっても過言ではありません。

 それは、さまざまな食品のみならず、たい肥の製造や下水道処理、ペニシリンに代表される抗生物質の生産、衣類の汚れを落とす洗剤の酵素など、暮らしのさまざまな場面で発酵の力が使われていることからも分かります。

 「発酵」に関わる微生物は、主にかび、酵母、細菌の3種類です。

魅力がいっぱい

①健康をサポート

 ◎免疫力を高める

 乳酸菌や納豆菌は腸内の善玉菌を助け、悪玉菌を抑制。免疫力が高まります。

 ◎血をサラサラに

 大豆などに多く含まれるイソフラボンは、発酵によって体に吸収されやすくなります。

 イソフラボンには、血中の悪玉コレステロールを減らす作用があります。

 ◎アンチエイジング

 ワインに多く含まれるポリフェノールには、抗酸化作用があります。


②食べ物をおいしく

 食品に含まれているタンパク質やデンプンは、発酵によってブドウ糖やアミノ酸になり、うま味になります。

 さらには、酢酸菌やグルタミン酸の働きなどでも、味の相乗効果を生み、さまざまな香りや味わいを生み出しています。


③保存性を高める

 野菜を漬物に、魚を魚醤やなれずしに、牛乳をヨーグルトにすると、腐らせずに保存することができるようになります。

 ただし、昔と違って今は、さまざまな食品がすぐに手に入るようになり、発酵食品の保存性という機能の役割は小さくなっています。

 健康志向の高まりもあって、発酵で使う塩分なども控えめになっています。賞味期限などが明記されている場合は、それに従うようにしてください。

日本の主な「発酵食品」
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 食品に限ってみても、古くから発酵の技術が用いられてきました。

 米が主食の日本では、大豆を塩こうじに漬けることで「みそ」や「しょうゆ」の原型が生まれ、納豆菌を付けることで「糸引き納豆」を作りました。

 畑の肉ともいわれる大豆には、タンパク質が豊富に含まれています。ご飯に納豆にみそ汁という伝統的な和食の朝ごはんは、健康を保つことにもつながっていました。そうした先人の知恵は、各地の食文化となって、今でも残されています。


みそ

 大豆に米や麦などのこうじを加え、発酵・熟成させます。そのこうじの原料により、「米みそ」「麦みそ」「豆みそ」「調合みそ(あわせみそ)」の4種類に分類できます。

 これらの「みそ」は、地域によって主に食される種類や味が異なります。「麦みそ」は、主に九州地方で食されます。「米みそ」は広く食されていますが、甘口の京都の「白みそ」や国内で広く流通している「信州みそ」、東京の江戸甘みそがあります。「豆みそ」には愛知の「八丁みそ」や「赤みそ」などがあります。

 大豆のタンパク質は、発酵するとペプチドなどに変わり、基礎代謝を促進します。また、GABA(ガンマアミノ酪酸)が、リラックス効果をもたらしてくれます。


パン

 世界で最もポピュラーな発酵食品がパンです。パンの発酵に適している酵母が「イースト」。それ以外にも、「パネトーネ種」という天然酵母を用いる15世紀のミラノで生まれた「パネトーネ」や、「酒種」を加えた「あんぱん」などもあります。発酵方法によって、さまざまな味や香り、食感などが楽しめます。


納豆

 発酵食品の代表ともいえる納豆。ネバネバが特徴の糸引き納豆に含まれるナットウキナーゼには、血管の中の血栓を溶かす働きがあります。

 こうじ菌と塩水で発酵・乾燥させたものは「塩辛納豆」といい、名前の通り塩辛く、調味料として使われます。ミネラルやビタミン類など、大切な栄養素が多く含まれています。


かつお節

 世界で最も硬い発酵食品といわれるかつお節。3枚におろしたかつおを煮た後、いぶして乾燥させたものを「荒節」といいます。

 これにかび付けを繰り返したものが「本枯節」です。かびの酵素がうま味のもとであるイノシン酸を増やし、上品なだしをとることができます。高タンパクで低脂質のうえ、長期保存も可能です。



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スギ花粉症 [健康]

 花粉症にもさまざまな種類がありますが、患者が最も多いのはスギ花粉症。今月から、その治療法の一つである「舌下免疫療法」への保険適用が始まります。舌下免疫療法について、日本医科大学の大久保公裕教授(同大学付属病院、耳鼻咽喉科部長)のお話から。
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治癒、長期寛解が見込める
 花粉症の治療といえば、かゆみ、くしゃみ、鼻水など、症状を抑えるための薬の使用が一般的です。これは症状に対して行う対症療法です。

 これに対して免疫療法は、あらかじめ花粉に反応しづらい体質づくりを目指す方法で、予防法と考えてよいでしょう。

 免疫療法では、病気の原因となる物質を少しずつ体内に吸収させることで、過剰な反応(症状)の抑制を進めます。スギ花粉症に対しては、はじめは低濃度から、やがて高濃度のスギ花粉を含んだ薬を投与します。

 唯一、花粉症の治癒、または長期寛解(症状が治まった状態)が期待できる治療法とされ、小児期に行うと、他のアレルギー疾患の合併を減少させる可能性があるなどの特長があります。

 ただし効果には個人差が大きく、治癒または症状の軽減が見られることが多いものの、10~20%程度、効果が現れないケースもあります。

 投与の方法は、これまで注射によるものにしか健康保険が適用されませんでした。

 この場合、通常、はじめの4~6カ月程度、週1回の通院が必要です。その後の通院は1カ月に1回で、2年程度継続します。通院回数の多さや、注射する際の痛みなどが課題とされています。

 これに対して舌下免疫療法は、通院回数が比較的少なく、苦痛の少ない方法とされています。
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 これまでも行うことはできましたが、健康保険が適用されなかったため、費用が課題でした。今回、保険が適用される対象年齢は12歳以上です。
治療の開始は12月までに 毎日、自宅での投与が可能

 舌下免疫療法では、注射の代わりに、原因物質(アレルゲン)を含むエキスを、次のような流れで投与します。

 ①スギ花粉を含むエキスを、舌の下に滴下する。

 ②舌の下に保持したまま2分間じっとし、その後、飲み込む。

 ③①②を毎日、最初の2週間は量を増やしながら行う。

 ④3週目からは同じ量を、毎日、舌下投与する。

 ⑤治療は、2年間ほど続ける。

 ◇ 

 月に1回の定期的な通院が必要ですが、基本的には自宅で行える点が、注射で行う場合との大きな違いです。

 ただし使用する薬が新薬のため、今後、約1年間は、一度に2週間分までしか処方できないことが厚生労働省によって決められています。

 したがって、この1年間に行う場合は、2週間に1回の通院が必要になります。

 なお治療費用は、3割負担の場合、1カ月当たり診察料を含めて3000~4000円程度です。

 投与後の注意点として、「5分間は、うがいや飲食を避ける」「2時間は、飲酒、激しい運動、入浴などを避ける」等が挙げられます。

 副作用には、口腔内のかゆみ、口唇の腫れ、咽頭の刺激感、ぜんそく発作、腹痛、嘔吐などが考えられますが、重症にまで至るものは少ないとされています。

 まれに、アナフィラキシーショック(強いアレルギー反応)が報告されています。

 また以下の状況の方など、治療を受けられない場合があるので、医師とよく相談してください。

 ・妊娠中である

 ・ぜんそく、気管支ぜんそくの症状が強く出ている

 ・重症の口腔アレルギーがある

 ・抜歯後など、口腔内に傷や炎症がある

 ・ステロイドや抗がん剤、β阻害薬など特定の薬を使用している

「指示通りに」「根気よく」
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 スギ花粉が飛んでいる期間に、免疫療法を開始することはできません。

 空気中の花粉に加えて、急激に、さらに花粉を体内に入れることになり、アレルギー症状が強く出てしまうためです。ですから、治療を開始するのは、通常、6月から12月までです。

 前述のように、舌下免疫療法の効果には個人差があります。また、大きな効果が得られても、時の経過とともに薄れていくケースは多く見られます。この場合、再度、1、2年間の舌下免疫療法を行うことが勧められます。

 この治療法の最大の注意点は、「医師の指示通りに」「根気よく」行うことです。投与の量と間隔を、きちんと守りましょう。
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 また、現状は行える医療機関が限られているので、医療機関のホームページで調べたり、電話で問い合わせたりするなど、あらかじめ確認した方がよいでしょう。

 今回はスギ花粉のみが保険適用となりましたが、その他の花粉やハウスダストなどへも、順次拡大していくことが望まれます。









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胃がんの原因 ピロリ菌除菌の勧め [健康]

 「ピロリ菌」は、胃がんをはじめ、多くの胃の病気の原因になるとされている細菌です。ピロリ菌と胃の病気の関係、そして除菌治療などについて、北海道大学の浅香正博特任教授(大学院・がん予防内科学講座)に教わる事。
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感染者は3500万人

 日本では年間、約5万人の方が胃がんで亡くなっています。

 また、がん全体における胃がんの罹患者数は、男性では1番多く、女性でも2番目に多くなっています。

 男女別の胃がん罹患者数は、男性が8万4000人余り、女性は4万人弱で、男性が2倍以上。死亡者数も、男性が女性の2倍近くに上っています。

 ちなみに、世界中の胃がん患者のうち、約56%が中国、日本、韓国に集中しており、胃がんは「東アジアの地域病」ともいわれているのです。

 胃がんの98%は、胃にすみついている「ピロリ菌」によって発生することが明らかになっています。

 そして、ピロリ菌は胃がんのみならず、胃潰瘍、慢性胃炎など、胃に関連するほとんどの病気の原因になっていることが分かってきました。

 国内では、約3500万人もの人がピロリ菌に感染していると見られています。


検査・治療に保険適用

 先月、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、胃がん予防のため、ピロリ菌の感染者が多い国に対し、スクリーニング検査と除菌を組み合わせる対策をとることを勧める報告書を発表しました。

 日本では、胃がんや胃潰瘍などに限られていたピロリ菌除菌への保険適用が、昨年、慢性胃炎の患者さん全体に広げられました。WHOの報告に先行して取り組んだといえます。

 具体的には、胃内視鏡検査を受け、ピロリ菌感染胃炎と診断された場合、検査から除菌まで、全てに保険が適用されることになります。費用は、検査と除菌治療を合わせて、通常、3割負担で数千円程度です。

 この内視鏡検査により、多くの胃がんの早期発見が可能になることが期待されています。

 これは、「保険を使用した内視鏡検診」ともいえるものです。一人でも多くの方に、ピロリ菌感染胃炎の疑いで医療機関を受診していただきたいと考えています。

 このように、ピロリ菌除菌と内視鏡検査を組み合わせることによって、胃がんは、死に至らずに済む病気に変わってきているのです。

 検査や治療に当たっては、かかりつけの医師に相談しましょう。以下のホームページで、近くの認定医などを調べることもできます。

 ●日本ヘリコバクター学会=http://www.jshr.jp/index.php?page=medic_list

 ●日本消化器病学会=https://www.jsge.jp/WHAT/NSWMEIBO/NSWSENMON01.asp

99%の患者が成功可能

 ピロリ菌は、加齢とともに感染の可能性が高くなります。現在、中学生・高校生では、5%が感染しているといわれています。若いうちに除菌できれば、胃がんになる確率を限りなく低くすることができます。

 近年、中高生へのピロリ菌検査の助成を行う自治体も出てきました。私は、中学卒業までに、全員がピロリ菌検査を受け、陽性なら除菌をするのが理想だと考えています。

 ピロリ菌感染を調べる方法には、大きく二つあります。

 ①内視鏡を使う検査(培養法、鏡検法、迅速ウレアーゼ試験)

 ②内視鏡を使わない検査(血中抗体価測定法、尿中抗体価測定法、便中抗原測定法、尿素呼気試験)

      ◇ 

 ピロリ菌が陽性の時には、除菌治療を行います。次のように進めます。
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 ●1次除菌

 まず、1次除菌と呼ばれる方法で、PPI(胃酸を止める薬)と、抗菌剤2剤(AMPC、CAM)を服用します。

 これを1日2回、1週間飲み続けることで、約80%の人が除菌に成功します。

 ●2次除菌

 1次除菌で効果が見られない場合、2次除菌に移行します。ここでは、先のCAMをMNZという薬剤に替えて、1日2回、1週間服用します。

 1次プラス2次除菌で、ピロリ菌を除菌できる確率は95%に上ります。

 ●3次除菌

 それでも除菌に成功しなかった場合は、3次除菌を検討します。

 2次除菌で使用したMNZに替え、違う抗生剤(ニューキノロン系)を使います。3次までで、99%が除菌に成功します。ただし3次除菌には、保険が適用されません。

年に1度内視鏡検査を
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 1次除菌の副作用として、軟便と下痢が現れることがあります。ただしほとんどの場合、薬の服用を中止するほどひどい症状ではありません。

 万一、症状がひどい場合は、すぐにかかりつけの医師に相談してください。自分の判断で服用をやめてはいけません。

 2次除菌でMNZを使用した場合、飲酒時にアルコールの濃度がうまく下がらないことがあります。2次除菌の治療中は、アルコールを控えるようにしましょう。

 なお、ペニシリンなど抗生物質のアレルギーがある方は、必ず医師に申し出てください。
      ◇ 

 50歳を超えている場合、ピロリ菌の除菌に成功すると胃がんになる可能性は低くなるものの、ゼロではありません。

 ですから除菌した後も、年に1回は胃の内視鏡検査を受けてください。そうすることにより、万一、胃がんが発生した時にも早期治療ができるので、亡くなる確率は極めて低くなります。


【参考情報】IARCの報告書から

 2012年に、中国など東アジアを中心に世界で約100万人が新たに胃がんになり、約72万人が亡くなったと推計。そしてピロリ菌除菌によって、胃がんの発生を30~40%減らせると述べています。

 また、世界人口や平均年齢が上がるのに伴い、胃がんによる死亡者数の増加が予想されるとしています。

 ■IARCのがん予防グループ長

 「ピロリ菌の罹患率の高いところでは、ピロリ菌のスクリーニング(検査)を行い、陽性なら治療を行うことが胃がんの発生を減少させるキーポイント」

 ■IARCの所長

 「ピロリ菌のスクリーニングと治療、プログラムを地域ごとに作成し実行していくことが、この致死的ながんによって亡くなることを予防する上で最も重要で、可能性の高い手段」

      ◇ 

 このように、ピロリ菌の除菌治療は世界的に推奨される治療になっています。

 日本はその先進国であり、比較的安価で検査・治療を行うことができるのですから、そのメリットを生かしたいものです。









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きょうのテーマは「鼻呼吸」 [健康]

 あなたは普段、口と鼻、どちらで呼吸をしていますか? 実は、口呼吸には健康上、さまざまなデメリットがあるといわれています。今回は、鼻呼吸を促す「あいうべ体操」の考案者である「みらいクリニック」(福岡市)の今井一彰院長に話を紹介します。
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約9割の人が「口呼吸」

 私は、体は正しい使い方をすれば健康が保たれるようにできていると思っています。

 誤った体の使い方の典型が「口呼吸」です。哺乳類の中で、「口呼吸」をしているのは人間だけなのです。これは、人間が言葉を発することと関係していると考えられ、私の診療を通しての経験では、約9割の人は「口呼吸」の習慣があります。

 しかし、本来は「鼻呼吸」をしていたものが「口呼吸」をするようになったことは、体にとっては不自然なことであり、私たちの健康を左右するといっても過言ではありません。


「鼻」と「口」の違い

 空気中には、ウイルスや化学物質など、無数の好ましくないものも含まれています。

 「鼻呼吸」の場合、線毛、そして粘膜によって、ある程度、ブロックすることができます。さらに、上咽頭にある扁桃リンパ組織が、異物を除去してくれます。

 ところが、「口呼吸」の場合、空気が口を乾燥させ、唾液による殺菌・消毒作用を低下させてしまいます。また、唾液に含まれている免疫物質が減ることで、免疫作用が下がり、咽頭炎や扁桃炎などの炎症を起こしやすくなります。

さて、あなたの舌の位置は?

着目のきっかけは口臭

 そもそも、私が「鼻呼吸」に着目するようになったのは、あるリウマチ患者さんの口臭がひどく、しかも炎症がひどくなるほど臭いが強くなることでした。

 「口呼吸」によって口腔内に雑菌が繁殖しやすくなると、当然、口臭も強くなります。

 それと同時に、免疫系の働きも大きく阻害されるので、炎症も悪化していくと考えられたのです。


呼吸法をチェック
 自分が「口呼吸」かどうかは、舌の位置で分かります。口を閉じた状態で、舌の位置はどこにあるでしょうか。

 舌が上顎にぴったりとくっついているのが理想的な位置です。

 しかし、「口呼吸」をしている人は、舌が、上の前歯の裏側に当たっています。

 また、次の項目で、一つでも当てはまるものがあったら「口呼吸」をしているかもしれません。



□いつも口を開けている

□口を閉じると、顎に梅干し状のしわができる

□食べている時にクチャクチャと音をたてる

□朝、起きた時に喉がひりひりする

□唇がよく乾く

□いびきや歯ぎしりをする

□口臭が強い

□たばこを吸っている


“舌の位置”を直す

 以来、私はことあるごとに患者さんに「鼻呼吸」を勧めてきました。

 「口呼吸」を直すために大事なことは、「舌の位置」を直すことです。そのためには、口輪筋や舌の筋肉を鍛えることが必要です。

 また、「鼻呼吸」を習慣づけるためには、繰り返しのトレーニングが大切です。そういったトレーニングは、やった方が良いことは分かっていても、患者さんは、なかなか持続できません。

 そこで私は、①難しい②時間がかかる③道具が必要――などといった「やらない理由」を無くすことにしました。

 そうしてできたのが、「あいうべ体操」です。これは、簡単で、短時間ででき、道具もいりません。しかも、無料でできます。

「あいうべ体操」で健康に! 「あいうべ体操」とは

 具体的には、次の四つの動作を順に繰り返します。声は出しても出さなくても構いません。

 ①「あー」と口を大きく開く

 ②「いー」と口を大きく横に広げる

 ③「うー」と口を強く前に突き出す

 ④「ベー」と舌を突き出して下に伸ばす

 ①~④を1セットとし、1日30セットを目安に毎日続けます。

 実は、この体操は、真剣に行うとかなり疲れます。

 慣れるまでは、30セットを、2~3回に分けたほうが続けやすいと思います。

 一番のお勧めは、周囲の湿度が高い、入浴時です。お風呂場であれば、口の中が乾燥する心配もありませんし、他人の目も気にする必要はありません。

 また、「あいうべ体操」は、しゃべるときより口をしっかり、大きく動かす必要がありますが、無理は禁物です。

 特に、顎関節症の人や、口を開けると痛む場合は、回数を減らすか、「いー」「うー」のみを繰り返してください。

 この「いー」「うー」体操は、関節に負担がかからないため、何回行っても結構です。

 「ベー」がうまくできない人は、大きめのあめ玉をなめて、舌を運動させましょう。


さまざまな症状が改善

 「あいうべ体操」を取り入れた九州のある学校では、その学年が、他の学年と比べて、欠席率が低くなるという結果がでています。

 また、これまで、私のクリニックで診療した患者さんの中でも、関節リウマチやアトピー性皮膚炎、過敏性腸症候群など、さまざまな病気の症状が改善していきました。

 ぜひとも、多くの人が「鼻呼吸」を習慣づけ、健康な生活を送ってもらいたいと思います。



 あいうべ体操カードは、以下のURLから印刷できます。

 http://miraiclinic.blog.jp/archives/51744562.html

■プロフィルhanakokyu2.PNG  いまい・かずあき 1970年、鹿児島県生まれ。95年、山口大学医学部を卒業後、同大学医学部救急医学講座に入局。2006年11月、福岡市博多区に「みらいクリニック」を開業。靴下外来を開設するなどのユニークな取り組みを続けている。著書に、『正しく「鼻呼吸」すれば病気にならない』(河出書房新社)、『免疫を高めて病気を治す 口の体操「あいうべ」』(マキノ出版)などがある。日本東洋医学会専門医、日本病巣疾患研究会副会長。



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痛み別特集 腰痛2 [健康]

★慢性化した腰の痛みを自分で解消する方法


20~40歳代に多い病気
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 椎間板は、椎体同士を接着させ、つなげている軟骨です(図1参照)。同時に、圧力を分散させるクッションの役割を果たす、とても重要な組織です。

 その構造は、中央部がゼラチン状の「髄核」、周囲はコラーゲン線維からなる「線維輪」からできています(図2)。髄核を「あんこ」、線維輪を「パン」に見立て、しばしば「あんパン」に例えられます。

 ヘルニアは、何らかの原因で、あんパンの「あんこ」が飛び出した状態といえます(「ヘルニア」はラテン語で「飛び出した」という意味)。

 線維輪に弱い部分があると、そこをめがけて髄核が膨らみ、その部分を押し出すようにしてヘルニアが発生します。しかし、なぜ線維輪に弱い部分ができるのかなど、詳細は明らかになっていません。

 現状で分かっていることは、ヘルニアになりやすい体質の人がいることと、職業やスポーツ、生活習慣などで一定の動作や姿勢が繰り返されることで、発病に至るのではないかということです。

 また、高齢者の病気というより、比較的若い人に起こる病気です。10歳代の患者さんもおり、多いのは20~40歳代。50歳代後半から、患者さんは減っていきます。

 実は、髄核が線維輪を破っただけで持続的な腰痛を起こすことはありません。その圧迫によって、馬尾や神経根などの神経に刺激が加わり、周囲に炎症が起こることによって、脚のしびれや痛みなどの症状が生じるのです(図3)。

適切なストレッチなど
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 視診、問診、運動・感覚・反射などを確認する各種検査・テスト、エックス線検査などをもとに、診断を進めます。

 診断が確定したら、まずは安静を保ち、薬物療法による保存療法を行います。

 薬は、痛みや炎症を抑える非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)や、緊張した筋肉をほぐして痛みを和らげる筋弛緩薬などを使用します。

 十分な効果が得られない場合、オピオイド鎮痛薬、神経性疼痛緩和薬と呼ばれる薬を使うこともあります。

 薬物療法で効果が見られない場合や、歩くことができないほどの激痛がある時は、前回説明した腰部脊柱管狭窄症の場合と同様、「神経ブロック」を行います。

 局所麻酔薬を神経やその周囲に注射して、痛みの伝達をブロックする方法です。「硬膜外ブロック」と「選択的神経根ブロック」があります。2週間ごとに受診し症状が楽になっていれば、薬の量や内容を見直しながら、保存療法を継続します。

 痛みが落ち着いてきたら適切なストレッチなどの運動療法を行い、腰や股関節周囲の筋肉をほぐすことが症状の改善につながります。

 お尻から太ももの後ろにある「臀筋」や「ハムストリングス」、太ももの内側の「内転筋」、体幹を支える「背筋」のストレッチなどが有効で、十分に伸ばして動きをよくすることで、腰への負担が軽減されるのです。

 炎症が鎮まると、ヘルニアを除去しなくても、8~9割の患者さんは症状が治まり、大きな支障なく日常生活を送れるようになります。

気を付けるべきケース youtu-3.PNG
 ただし、膀胱直腸障害(排尿や排便のコントロールができない)や、肛門・会陰部(肛門と外陰部の間)のしびれ・灼熱感がある、脚や足首に力が入らない(まひ)場合などは、放置すると神経の損傷が元に戻らなくなる危険があり、緊急手術の必要があります。

 次のことが当てはまる時にはその恐れがあるので、整形外科の専門医への受診が勧められます。

 ①どのような姿勢をとっても、痛みが取れない

 ②腰から脚にかけて、しびれがある

 ③痛みやしびれが、だんだん強くなってきた

 ④症状が出てから2、3日たっても、激しい痛みが取れない

 ⑤脚が動かせない

 ⑥脚や足首に力が入らない

 ⑦尿が出にくい、あるいは漏れる

 ⑧頻繁に便意をもよおす

 特に⑤~⑧は、一つでも当てはまったら、緊急手術が必要となる可能性があります。

     ◇ 

 神経ブロックをした後も症状が治まらない場合は、手術を検討します。

 手術法には、「ラブ法」「顕微鏡下椎間板切除術」「内視鏡下椎間板切除術」「経皮的内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術」などがあります。

 傷口の大きさ、手術後の痛みなど、それぞれに特徴があります。また、何よりも患者さんの状態によって、どの方法がよいかを検討します。担当医とよく相談してください。

 入院期間も手術の方法によって違いがありますが、おおむね1~2週間程度です。

 高額療養費制度の対象となりますので、病院等でよく確認してください。

★慢性化した腰の痛みを自分で解消する方法


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痛み別特集 腰痛 [健康]

★慢性的な腰の痛みで困っていませんか?


動作に気を付け、休ませる
 近年、高齢化の影響もあり、慢性の腰痛を訴える方が増えています。
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 原因が特定できないものも少なくありませんが、たいていは単純な疲労などからくるもので、時間の経過とともに治るため、さほど心配はいりません。

 その特徴は以下になります。

 ・2~3日で痛みが治まる

 ・痛みが「出たり、無くなったり」を繰り返す

 ・痛みの程度に悪化が見られない

      ◇ 

 こうした腰痛が出た場合、まずは次のような方法で対処しましょう。

 ①痛くなる動作を避ける

 かがむ、重い荷物を持ち上げるなど、経験から痛むことが分かっている動作は避けましょう。

 ②腰を休ませる

 横になるなど、腰に負担の掛からない体勢で休憩しましょう。


“オーダーメード”の治療を

 突然起きるギックリ腰も、急性期は激しい痛みに襲われるものの、数日安静にしていれば治まっていきます。

 一方で深刻な問題になりかねないのは、何らかの理由によって、腰に集まっている神経を圧迫してしまっているケースです。この場合、下肢のしびれや違和感などの神経症状を伴う痛みが、1~2週間してもひきません。

 また、放っておくと痛みはだんだん悪化していきます。このような状況の時は、すぐに整形外科で専門医を受診しましょう。「日本脊椎脊髄病学会」認定の指導医を、同学会のホームページで確認できます(http://www.jssr.gr.jp/list/index.php)。

 痛み方や程度は、人によって違います。そして、適切な治療法も、一人一人の状態によって違ってきます。

 よく、腰痛の治療がうまくいった人の話を聞いて、「あの人と同じ治療(または手術)をしてほしい」等といわれることがあります。しかし、これは必ずしも望ましいことではなく、やはり個々の状態に合わせた“オーダーメード”の治療を行う必要があります。

 次に、腰痛の代表といえる、「腰部脊柱管狭窄症」と「腰椎椎間板ヘルニア」について概説します(後者は次回)。

腰部脊柱管狭窄症 中高年以上に多く発生
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 背骨は、「椎骨」という骨が24個連なって構成されています。上から7個が「頸椎」、次の12個が「胸椎」、続く5個が「腰椎」です(図1)。

 椎骨を横から見ると図2のようになっています。椎体と椎弓の間は中が空いており、椎骨がつながっていくと、トンネル状の空洞ができます。この空洞のことを「脊柱管」といいます。

 脊柱管の内部には、神経が通っています。

 脊柱管が何らかの理由で狭くなって、臀部から脚へと延びる神経の根元を圧迫することで、脚のしびれや痛みなどの症状が出るのが、腰部脊柱管狭窄症です。

 生まれつき“トンネル”が狭いために起こる場合もありますが、多くは加齢によって椎体と椎体の間にある椎間板が変性し、背骨が変形して脊柱管が狭まります。そのため、中高年以上の人に多く発生します。

 椎骨を上から見ると、図3のようになります。脊柱管狭窄症では、神経の束である「馬尾」を圧迫している場合(馬尾型)と、「神経根」を圧迫している場合(神経根型)、その両方を圧迫している場合(混合型)、それぞれに特徴があります。

 ●馬尾型

 両脚がしびれますが、痛みは軽度であることが特徴です。しびれの他、脱力感や灼熱感を訴える人もいます。脚や尻、会陰部(肛門と外陰部の間)の知覚異常や、膀胱直腸障害(排尿や排便のコントロールができない)、性機能障害を伴うこともあります。

 ●神経根型

 片側の脚だけに、痛みやしびれが出ます。

 ●混合型

 前出の二つの症状が混在しています。歩いていると両脚がしびれてきて、やがて片側の脚だけがとても痛くなる場合は混合型と考えられます。

代表的な症状は間欠跛行
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 「間欠跛行」も、この病気の代表的な症状です。

 これは、歩いているうちに、脚がしびれたり痛くなったりして歩けなくなるのですが、しばらく休憩すると症状が治まり、再び歩くことができるという状態です。

 ちなみに、脊柱管は背を反らすと狭くなり、前かがみになると広がります。そのため、いすに腰掛けると症状が和らぎます。

 歩くと症状が出るのに、自転車をこぐのは平気(前かがみになるので)というのも、この病気の特徴です。

 腰部脊柱管狭窄症が疑われる場合は、問診、視診、触診、痛みを誘発させるテストなどの他、エックス線写真やMRI(磁気共鳴画像法)等の画像検査も行います。


保存療法と手術療法

 診断が確定すれば、まず保存療法を行います。薬物療法、神経ブロックなどがあります。

 薬物療法で最初に使うのは、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)で、痛みと炎症を抑える働きがあります。

 副作用として胃腸障害が心配されますが、起こしにくいタイプも開発されているので、最近はそちらから使用し、効果が見られない場合にその他のNSAIDsを試します。

 痛み、しびれ、脱力感などの症状によって、漢方薬を含めた他の薬を併用することがあります。

 薬物療法で効果が無い場合は、神経ブロックが有力な選択肢となります。これは、神経やその周囲に局所麻酔薬を注射し、痛みの伝達をブロックする方法です。「硬膜外ブロック」と「選択的神経根ブロック」の二つの方法があります。

 効果は個人差が大きく、1年以上持続する人もいれば、1日しか効果の無い人もいます。

 保存療法を3~6カ月続けても効果が見られない場合は、手術療法を検討します。

 腰椎が安定している場合には、「拡大開窓術」「棘突起縦割式椎弓切除術」「内視鏡手術」などの方法があります。

 腰椎が不安定だと、固定しなければ再発のリスクが高いため、「ミニオープン腰椎固定術」「MIS固定術」などの手術法から選択します。

 手術や手術法の検討に当たっては、担当医とよく相談してください。高齢になっても可能なケースもあります。

 いずれも入院は2週間程度です。高額療養費制度の対象となるので、病院等でよく確認してください。

★慢性化した腰の痛みを自分で解消する方法




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きょうのテーマは 靴の選び方 [健康]



足と靴と健康協議会 主任研究員 俣野好弘さん

 毎日の生活に欠かせない「靴」ですが、流行のデザインなどに左右され、自分の足に合っていない靴を選んでいませんか。今回は一般社団法人「足と靴と健康協議会」の俣野好弘主任研究員に、靴選びのポイントを伺いました。
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 人の足は、顔と同じように、十人いれば、十人の形があります。全く同じ形をした人はいません。

 近視や乱視の人は、眼鏡を買う時、必ず検眼して購入しています。でも、靴はサイズだけを頼りに、試し履きもせずインターネット通販で買う人も。履きやすさではなく、色やデザインで選んでいるのです。

靴べらがいらない靴は合っていない

 一般的な靴のサイズは「足長」が目安ですが、「足囲」も重要です

 皆さんは靴を履く時に、靴べらを使用していますか。甲の部分にひもや面ファスナーが付いていない靴を靴べらなしで履けるなら、自分の足囲に靴が合っておらず、ゆるい証拠です。

 足に合った靴を靴べらを使って、最後に「かかとをトントン」として、きちんとかかとを付けましょう。
 欧米に比べ、日本は靴の歴史が浅く、家の中では靴を脱ぐ習慣もあります。自分に合っていない靴も、我慢して履き続け、足のトラブルで悩む人が多くいます。一番大事なのは、足によく合い、目的に合った靴を選ぶことです。

シューフィッターに測ってもらおう

 購入の際は、図のようなチェックポイントを確認しながら、実際に両足で試し履きをしてから買うようにしましょう。

 百貨店などの靴売り場には、足と靴と健康について学んだ「シューフィッター」が在籍しています。「今度購入する時の参考にしたいので、足を測ってほしい」と伝えれば、簡単な計測なら無料でアドバイスを受けられますので、一度、自分の足を、正確に測ってみてはいかがでしょうか。

 はだしのような感覚で歩ける自分の足に合った靴は、皆さんの日々の生活をより充実したものにすることは間違いありません。

主な爪先の形

 爪先の形は、「エジプト型」「ギリシャ型」「スクエア型」の3種類に分類しています。日本人はエジプト型が多いといわれていますが、爪先の形に合わせて、3種類の靴が販売されているわけではありません。

 パンプスなど、爪先部分に丸みが少ない靴を選ぶ時は、それぞれの足の爪先形状ごとに、足長のサイズを変えて選ぶことも必要です。

足のトラブル

 合わない靴を履き続けると、さまざまな形で足のトラブルが起きます。

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★外反母趾

 爪先が狭く、第1趾が圧迫される靴を履き続けるなどしたために、第1趾が外側の方向に曲がる病気です。


★巻き爪

 爪が伸びている時に、爪先部分が薄い靴を履くなどして、圧力が繰り返し加わると爪が湾曲してきます。


★陥入爪

 靴の爪先部が薄く狭いとアッパー部分が爪を圧迫し、主に第1趾の爪の両側が肉に食い込んできて炎症を起こす。

★魚の目

 幅の窮屈な靴や合わない靴による圧迫などが原因。尖った先端が体内の神経を刺激するため鋭い痛みがある。


★ハンマートー

 爪先部分に余裕がない靴を、足指を曲げたまま履き続け、関節が曲がって固定してしまった状態です。


かかとの減り方で歩行チェック

 靴を選ぶ際は、後部のかかと回りと、土踏まずがしっかりと支えられることがポイントです。

 また、足指の付け根の関節部分が十分に曲げられることも大事になります。

 人は歩く時に、①かかと部分の外側②第5趾の付け根③第1趾の付け根の順番で地面に着地。最後に、第1から第3の指で、蹴り出しながら進んでいます。

 この歩行の仕方は9歳ぐらいから始まり、60歳ぐらいまで続くといわれています。正常な歩行ができているかどうかは、靴のかかと部分の減り方で判断できます。

 O脚やX脚の人は、運動などでの足の痛みが生じやすく、加齢とともに変形性膝関節症などの原因にもなります。中敷き(インソール)を上手に使い、軽減することをお勧めします。
年齢や目的別に履き分けよう!

高齢者転倒対策で選ぼう
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 高齢者の靴選びで、一番のポイントは「転倒対策」です。軽く柔らかいものというより、各パーツがしっかりと足を支えて保護し、適度な軽さのものがお勧めです。

 高齢者は、底材が柔らか過ぎて、膝や腰のトラブルにつながることも多くなります。


【チェックポイント】

 □理想のデザインは、くるぶしまで包み込むタイプ

 □爪先の余裕は少なく、5ミリ程度(歩く時、指が前にぶつからない)

 □靴の爪先の形状は、足指の形状に近い

 □爪先は、地面より十分に上がっており、前に突き出していない

 □靴底の先端や地面に接する所は、かどがなくゆるやか

 □かかと回りは、芯が入ったしっかりとしたもの。また衝撃を吸収できるもの

 □足指の付け根部分は、よくしなって曲がりやすい

 □靴底は適度にすべりにくい


子ども 春と秋にサイズを計測

 幼児や子どもの身体は4月から9月の半年間で3分の2、残りの期間で3分の1成長するといわれています。

 足長は一般的には年間1㌢程度伸び、2㌢伸びる場合も少なくありません。少なくても、春と秋の年2回は足の大きさを確認するよう心掛けましょう。

 靴が小さくなったと思ったら、まだ十分履ける状態でも、上のサイズに変えることが大事。足の形は子どもの時に決まります。窮屈な靴を履き続けると筋肉が圧迫され、骨の正しい成長を妨げてしまいます。


【チェックポイント】

 □かかと回りの芯がしっかりとしている

 □爪先の形状が足指の形状に合っていて太め

 □爪先が十分に上に反っている(トースプリングがある)

 □足指の付け根部分がよく曲がる

 □底材がしなやかで弾力性がある

 □ひもや面ファスナーで甲の部分を留められる

 □甲と足裏部分の素材はしなやかで吸放湿性に優れる

持っている靴を活用するには? パッド調整で負担軽減

 自分に合った靴を履くことが一番大事ですが、現在持っている靴をそのまま履きたい人も多くいると思います。靴が大きく感じる方は、市販の中敷きやパッドなどを試してみてはいかがでしょう。靴関連のコーナーや100円ショップなどでも販売しています。

 今回は外反母趾で悩む人のために、中足骨パッドでの調整を紹介します。

 ①靴を履いたら、第1趾と第5趾の付け根部分(一番突き出た所)をマーキングします(図1)。

 ②足を抜き、図2のように物差しなどを当て、垂直に見てパッドの先端が物差しの線に合うように貼り付けます。横の位置は、パッドの真ん中が、第2趾と第3趾の間になるようにします。



 パッドの厚みは、外反母趾のトラブルが多ければ厚めにしてみてください。履いた時、気持ち良く、何かが入っているな、と感じる程度が一番効果的です。

 パッドを靴に貼り付ける時は、両面テープがお勧め。中敷きの下に入れると見えません。



食欲の秋食べ過ぎに注意ですよ! [健康]

炭水化物単品食べはダメ
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 体重が「増加した」「やや増加した」と答えた人は、25・1%に上り、実に4人に1人が「太り」を実感していることが分かりました。特に、女性の「太り」の結果が、顕著に表れています。

アドバイス

 食事といえば、夏はそうめんやスイカなどの果物、清涼飲料水やかき氷など、さっぱりとした物を思い浮かべる方が多いと思います。気温が高くなり、食欲が低下する夏は、このような炭水化物を多く含む物を“単独”で摂取しがちです。夏まで取れていたさまざまな栄養素も、炭水化物中心の食生活となり、軽い栄養失調を起こしてしまいます。秋は肉料理がおいしくなりますね。

 喉越しの良い麺類、食べやすいおにぎりやパン、清涼飲料水など、炭水化物が多い物は、満腹感を得にくいので、知らないうちにカロリーを取りがちです。さらに、ビタミンB群などの栄養素が不足すると、炭水化物をうまく活動のエネルギーに変換することができず、疲労につながりやすくなります。

 疲労を感じると、いつもと同じように体を動かしにくくなるので、仮に摂取カロリーが大して変わらなくても、カロリー消費がスムーズにいかず、体重増加につながる可能性があります。

夏にとれなかった食事も秋は反動で、秋の味覚と言って食べ過ぎに注意が必要です。

日頃不足しやすい栄養素を考えて

★たんぱく質・鉄分

 たんぱく質は肉、魚、豆類などに多く含まれています。人の体を作るもとになる栄養素で、不足すると疲れやすくなります。たんぱく質が多い食品には鉄分も豊富に含まれていることが多く、たんぱく質が不足すると同時に鉄分も不足している可能性があります。鉄分が不足すると貧血などを起こしやすくなります。

★食物繊維

 食物繊維が不足すると、胃腸の動きや腸内細菌のバランスに不具合が出てしまう場合があります。また、便秘や下痢の原因になる可能性も。食物繊維は雑穀類、豆、野菜などに多く含まれています。


★ビタミンB1

 ビタミンB1が不足すると、摂取した炭水化物を活動のエネルギーに変えることがスムーズにできず、疲れやすくなります。ビタミンB1は豚肉、ナッツ、大麦、玄米などに多く含まれます。また、糖質を多く摂取する人やお酒を飲む人は、多めのビタミンB1が必要になります。

★ビタミンB2

 ビタミンB2は、炭水化物、たんぱく質、脂質が体内で使われていくサポートをする働きがあります。ビタミンB2は、乳製品、納豆、小麦胚芽、アーモンド、卵、肉、緑の濃い野菜などに多く含まれます。ビタミンB2が不足すると疲れやすくなる可能性があります。

それには、日頃のおいしいグルメ紹介サイトを上手に使いましょう。


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