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肺炎〈下〉 [健康]

病原体を「推定」し早期に治療開始
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 現在、日本人の死亡原因で第3位となっている肺炎。その肺炎について、前回に続き、奈良県立医科大学大学院医学研究科の三笠桂一教授(同大学附属病院感染症センター長)に聞きました。今回は、市中肺炎の診断、治療、予防を中心に紹介します。

適切な薬の投与が重要

 前回、述べましたが、一般の町中(市中)で発症した肺炎を「市中肺炎」と呼び、ここでは市中肺炎を中心に説明します。
 肺炎の診断は、通常、胸部エックス線検査によって確定されます。
 一方で、原因病原体を特定するためには、尿の検査や、血液・痰の培養を行いますが、いずれも少々、日にちが必要です(病原菌が一つでない場合や、正確に特定できない場合もあります)。
 肺炎の治療では、原因病原体に効果のある適切な薬の投与が重要ですが、それとともに、早期の治療開始が大切です。検査の結果を待つために治療開始を遅らせてしまっては、重症化を招く恐れがあります。
 そのため通常は、まず病原体を「推定」し、治療を開始します。
 傾向性として、黄色い痰が多い時は、原因病原体が肺炎球菌のことが多く、乾いた咳が強い時はマイコプラズマが原因となっていることが多いといわれています。
 マイコプラズマなどの非定型肺炎では、細菌性肺炎に比べて、年齢が若い、基礎疾患が無いか軽い、痰が少ない、咳が強い、などの特徴を備えていることが多いともいわれます。
 実際には、患者の年齢、基礎疾患の有無、咳や痰の症状、胸部の状態や血液検査をもとに、医師が診療のガイドラインを参考に、細菌性肺炎か、非定型肺炎かを大きく推定・鑑別し、適切な薬の投与を始めます。
 どうしても鑑別が難しい場合は、細菌性と非定型の両方に対して薬を投与するケースもあります。

重症例などでは入院も

 この時、重症度の確認も行われます。中等症で脱水症状を伴う場合や重症例では、入院して治療を行います。ただしそれ以外でも、65歳以上の高齢者で通院が困難な場合は、入院することもあります。
 同時に、咳、痰、発熱に対する薬の投与なども行い、患者さんの体への負担を軽減させる対症療法にも取り組みます。
 治療を開始した場合、その数日後から1週間後に再度診察し、体の状態と検査の結果を組み合わせて、治療の効果を判定します。
 細菌性肺炎で効果が見られた場合、抗菌薬の投与は5~7日程度続けます。
 適切な薬による治療が行われれば、1~2週間で治癒します。効果が不十分、あるいは無い時には、薬を変更(または追加)して治療を継続します。原因病原体が特定できた場合には、その病原体に最も有効と考えられる抗菌薬に変更することもあります。

「予防」のポイント

 肺炎は、早期の発見・治療開始とともに、予防に努めることも、とても重要です。
 予防のポイントを次に列記します。
 ①風邪やインフルエンザの予防
 手洗い・うがいの励行、マスクの着用などを行いましょう。
 ②基礎疾患の管理
 慢性心疾患、糖尿病などの基礎疾患のある方は、状態をコントロールできるよう、努力しましょう。
 ③口腔ケア
 特に誤嚥性肺炎に関しては、誤嚥を防ぐしか予防法がありません。また、細菌が繁殖しないよう、ブラッシングなどで口の中を清潔に保ちましょう。
 ④予防接種
 肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンなどを積極的に接種することが肺炎の予防につながります。
 ⑤その他
 日常の健康管理や、禁煙も大切です。

肺炎球菌ワクチン

 次に、前述の予防接種の中で、肺炎球菌ワクチンの接種について詳述します。
 肺炎球菌は、肺炎の原因として大変に頻度の高い病原体ですが、ワクチンが開発されています。特に接種が勧められるのは、以下の方です。
 ●65歳以上の高齢者
 ●2~64歳で、次の慢性疾患やリスクのある人
 ・慢性心不全(うっ血性心不全、心筋症など)
 ・慢性呼吸器疾患(COPD=慢性閉塞性肺疾患など)
 ・糖尿病
 ・アルコール中毒
 ・慢性肝疾患(肝硬変)
 ●脾臓の摘出をした人、または脾臓が機能不全の人
 ●高齢者施設や長期療養施設などの入所者
 ●感染症になりやすい病気にかかっている人=エイズウイルス(HIV)感染者、白血病、ホジキン病、多発性骨髄腫、全身性の悪性腫瘍、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、移植患者等長期免疫抑制療法を受けている人、副腎皮質ステロイドの長期全身投与を受けている人など
      ◇ 
 主に接種される肺炎球菌ワクチンは、23価肺炎球菌多糖体ワクチンと呼ばれるものです。一口に肺炎球菌といっても、実体は数十種類の菌株があり、このワクチンで全ての菌株をカバーすることはできません。ですので、絶対に肺炎を防げるというわけではありませんが、一定の予防効果が期待できます。
 現在では接種から5年たった場合には、再接種することも認められています。
 また、生後2カ月以上6歳未満の小児の、侵襲性肺炎球菌感染症(肺炎、細菌性髄膜炎など)の予防のためには、13価肺炎球菌結合型のワクチンの免疫持続効果が高いとされます。
 さらに成人にも有効性が示されて使用できるようになり、予防方法の選択肢が広がりました。
 ワクチンの接種に関しては、必ず医師によく相談してください。なお、ワクチン接種に健康保険は適用されませんが、助成をしている市町村もあるので、確認してみましょう。

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